ジャガー、ロールスロイス…伝統の名車を「EV」に 英国で改造車が人気

2020年7月29日 14時00分
 

充電中のジャガーXK120=ルナズ・デザイン提供

 クラシックカーを電気自動車(EV)に改造したエレクトリック・クラシックカー(ECC)が英国で人気だ。世界中で排ガス規制が強化される中、名車を次世代に引き継げるECCの需要は増加の一途。改造費は莫大だが、歴史と伝統を重んじる英国らしい趣味だけに、各国の富裕層も注目する。古典と最新技術が融合したECCの世界とは。(ロンドン・沢田千秋)

◆衛星通信、Wi―Fi、エアコンも搭載

 「このシルエット、デザイン、たたずまい。これは世界で最も美しい車。将来、娘にも乗ってほしくて電気自動車化(電化)した」
 記者がロンドン中心部で偶然見かけた1953年製のジャガーXK120のオーナー、デビッド・ロレンスさん(34)は言う。クラシックカーの整備会社「ルナズ・デザイン」の創設者でもある。

電気自動車に改造中のロールス・ロイス・ファントム=ルナズ・デザイン提供

 同社は2019年、ジャガーのほか、1950~60年代製のロールスロイスやベントレーなど14台を電化した。まず、全体を3Dスキャンし、原形を記録したうえで、内外装とも限界まで分解する。走行用のバッテリーだけでなく、最新の衛星通信システムやWi―Fi、音響機器やエアコンなども搭載。全て、元来のデザインに巧みに織り込まれる。
 ロレンスさんによると、電化について「クラシックカーの『純血主義者』からの批判はある」という。だからこそ「伝統と外観を損ねないよう最大限の注意を払い、最高の尊敬と愛を持って扱っている」そうだ。

◆ジャガーEVの価格は4750万円から

 ジャガーの場合、バッテリー容量は80キロワット時で、時速60マイル(約96キロ)までの加速にかかる時間は5秒。最長航続距離は250マイル(約400キロ)だ。
 販売価格は車両込みで35万ポンド(約4750万円)から50万ポンド(約6800万円)。かなり高額だが、需要は増えている。今年はスタッフを2倍にして20台を電化予定で、来春まで工場は予約でいっぱいだ。

疾走する電化されたジャガーXK120(左)とベントレーS2=ルナズ・デザイン提供

 ジャガーを運転していると、街中で見知らぬ人が手を振ってくるという。ロレンスさんはそのブランド効果にも期待。「東京のペニンシュラホテルで、クラシックのジャガーが充電していたら、壮大な眺めでしょう。ECCは環境に優しく信頼性、実用性、持続可能性を備えた最高級の車。ニューヨークや東京でも見たい」と熱弁した。
 英国のクラシックカー専門記者アンドリュー・ノークス氏によると、ECCの流行は、英国で2、3年前から始まった。しかし、全てのクラシックカーが電化に向いているわけではない。「12気筒エンジンのフェラーリやポルシェ911を電化したら、最大の魅力であるエンジン音と反動が失われ、完全に違う車になってしまう」と話す。

◆排ガス規制の強化が需要を後押し

 ただ、大気汚染改善に向けた排ガス規制は強化の一途だ。英政府は2035年までに、ハイブリッドを含むガソリンとディーゼル車の販売を禁止する方針。ノークス氏は「私たちの世代で電気自動車は主流となり、ガソリン車は先細る。クラシックカーの電化は未来の必然だ。需要増は間違いない」と断言する。
 もともと歴史的遺産を好み、クラシックカー人気が高かった英国発の新産業は、世界中の富裕層に広がり始めている。ノークス氏は「英国らしい高級な趣味と環境保護志向を体現するECCは、富裕層のシンボルとして、サウジアラビアやアラブ首長国連邦(UAE)でも注目されている」と解説。将来、ガソリンで走るクラシックカーの希少価値が、逆に高まっていくとみている。

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