国交樹立以来の政策を転換も中身は…米の対中戦略は逆効果?

2020年7月30日 06時00分

◆国務長官の対中強硬演説に疑問の声

 トランプ米政権が中国の習近平政権をかつてないほど激しく批判し、敵対姿勢をむき出しにしている。ポンペオ国務長官は23日の演説で米中国交樹立以来の対中政策を抜本的に見直す意向を示し、互いの総領事館閉鎖に踏み切った。ただ、政策見直しの具体的な中身はこれからで、実効性を疑問視する声もある。(ワシントン・金杉貴雄、岩田仲弘)

1972年2月、中国を電撃訪問したニクソン米大統領㊨(肩書は当時)と握手する毛沢東中国共産党主席(同)=AP

◆共産党政権の開放路線継続が前提だったが

 ニクソン元大統領が電撃訪中して以来、歴代米政権は中国の発展を後押しして民主化を促す「関与政策」を対中政策の基本と位置付けてきた。オバマ前政権で国務次官補(東アジア・太平洋担当)を務めたダニエル・ラッセル氏は「中国の問題行動を修正するには、どう説得し、圧力を加え、あるいは動機づけるか、関与政策により継続的に試し、それはある程度成功してきた」と主張する。
 ただこの政策は、共産党政権が改革開放路線を継続することを前提として進められてきた。ポンペオ氏の演説はこの前提を破棄したことを意味しており、その点で2018年にペンス副大統領が厳しく中国を批判した演説と異なる。
 ブッシュ(子)政権でチェイニー副大統領の副補佐官を務めたプリンストン大のアーロン・フリードバーグ教授は、対中貿易が行き詰まるなか「政権で追求する新たな戦略」の一つとしてポンペオ氏に権限を与え、トランプ大統領も承認していると分析する。

◆深刻な領事館閉鎖「冷戦期にもなかった」

 ポンペオ氏の演説直後、米国はテキサス州の中国総領事館、中国は成都の総領事館をそれぞれ閉鎖した。ラッセル氏は「緊張悪化は深刻だ。米中関係ではもちろん、旧ソビエトとの冷戦期もなかったことだ」と懸念を示す。米シンクタンク戦略国際問題研究所(CSIS)のボニー・グレーザー上級顧問も「領事館の閉鎖は政権が代わっても簡単には覆せない。トランプ政権はそれほど圧力を加えている」と緊張が高まっているとの見方を示す。
 ただポンペオ氏は、共産主義の中国を「変える」と訴えたものの、何をどう変えるかは具体的に触れなかった。グレーザー氏は、関与政策の見直しが共産党体制の転換にまで発展したとしても「逆効果だ」と指摘する。新型コロナウイルスの封じ込めに成功したとアピールする中国共産党は情報を厳しく統制しており、米側の働きかけは「かえって国民の愛国心を刺激する」からだ。

◆依存度高く、完全切り離し困難

 グレーザー氏は、米中の相互依存関係を絶つ「デカップリング(切り離し)」についても「通信や技術など目標を絞って進めると思うが、さまざまな分野で中国への依存度は高い。完全な切り離しはできない」と予測する。その上で「政権全体に(関与政策転換の)共通目標があるとは思えない」との見方を示した。

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