老いは劇的、普遍的 ブラジル映画「ぶあいそうな手紙」

2020年7月30日 07時25分

アゼベード監督

 ユーモラスで心温まるブラジル映画「ぶあいそうな手紙」が東京・シネスイッチ銀座などで公開されている。孤独で頑固な七十八歳の男が若い女性の後押しで、かつて思いを寄せていた女性との甘美な記憶を取り戻す物語。アナ・ルイーザ・アゼベード監督(60)は「老い、というものに興味があった。普遍的なテーマで日本人にも受け入れられる」と話す。 (竹島勇)
 作品の舞台はブラジル南部のポルトアレグレ。アゼベード監督の出身地で、現在も暮らす。この街にいる監督にテレビ会議システムで話を聞いた。新型コロナウイルス感染者が米国の次に多いブラジルとあって、政府の無策を嘆き「自宅にいるだけ」と話す。そんな監督にとって「老いは劇的だ」という。「目が見えなくなったり病気になったりしながら、家族と同居するかどうかなど人生の選択、決断を迫られるからね」
 主人公は四十六年前に政情不安のウルグアイから移り住み、妻に先立たれたエルネスト(ホルヘ・ボラーニ)。サンパウロに住む一人息子からは同居を勧められるが、ポルトアレグレのアパートで一人暮らしを続ける。本が好きだったが、視力はほとんど失われてしまった。ある日、偶然知り合った二十三歳の女性ビア(ガブリエラ・ポエステル)に代読してもらった手紙で、ウルグアイの旧友の死を知りショックを受ける。
 ビアは年長のエルネストに臆することなく接し、手紙を送ってきた友人の妻とエルネストがお互いに好意以上の感情を持っていることに気づく。返事の代筆を頼まれたビアは堅苦しいエルネストの文案を却下するばかりか彼を鼓舞し、率直で情熱的な愛情を込めた文章に変える。
 「ビアは自由奔放でエルネストの世界を広げる。エルネストはビアのおかげで旧友の妻への愛情を確かめ、ビアは逆に彼から紳士の生き方を学ぶのです」
 自分の気持ちに正直に、大胆な行動に出るエルネスト。文化が異なる日本で作品は受け入れられるのか−。「昨年、韓国の釜山国際映画祭で観客たちは深く理解してくれた。日本人も同じだと思う」と強調した。さらに「実は老いについて私が大きな影響を受けたのは『東京物語』(小津安二郎監督)と『楢山節考』(今村昌平監督)だ」と老人の孤独や老いの問題を描いた日本の名作を挙げ、笑顔を見せた。

「ぶあいそうな手紙」から

関連キーワード

PR情報

芸能の新着

記事一覧