生きたいと思える社会に ALS患者の嘱託殺人受け 難病患者ら訴え

2020年7月30日 13時54分
京都の筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者の嘱託殺人事件は、医師2人の逮捕から30日で1週間。「安楽死、尊厳死の是非を議論するのではなく、誰もが生きたいと思える社会にすることが大事」。事件はALS以外の難病患者らにも衝撃を与えている。
 「重度障害者が死を選ぶと『とてもつらいだろうし、本人の選択なら良かったのでは』となることに強い違和感がある」。日本自立生活センター(京都市)のスタッフ岡山祐美さん(40)は話す。岡山さんはALSと同様、徐々に全身の筋肉が萎縮していく難病を10代で発症。現在は24時間の介助を受けて暮らす。

ALS患者の嘱託殺人事件について話す岡山祐美さん=29日、京都市

 インターネット上では、逮捕容疑となった医師の薬物投与を肯定する意見も見られ「障害者の人生は価値が低いとの感覚が広まるのが怖い」と懸念する。実際には主体的に生きている障害者もたくさんいる。「その姿を知らないから『大変そう』という想像しかできない。健常者と暮らしの場を分けるのではなく、互いを知り一緒に生きられる社会になってほしい」
 極度の心身の衰弱や睡眠障害などが続く神経系の病気「筋痛性脳脊髄炎」の患者会理事長の篠原三恵子さん(62)は、事件が「ショックだった」と話す。30年前に発病し、約15年寝たきりに近い状態が続く。身体障害のある人々との出会いで「障害があったままで良いと思えるようになった」と語る。
 「病気を受け入れるには時間がかかるが、きっかけや出会いがあれば生きていく意味や可能性を見つけられたはず。(容疑者らは)そのためのサポートもせず、命を奪ってしまった」と憤る。「何が彼女を死にたいと思わせてしまったのか。重い障害や病気を抱えていても、尊厳を持って生きられる社会なら違ったのではないか。つらい気持ちに寄り添うことができず悔しい」と吐露した。
 脊髄性筋萎縮症患者の大藪光俊さん(26)は「安楽死を認める方向に話が進むのは反対」と力を込める。「人間誰しも、人の手を借りて生きることは悪いことじゃない。人に迷惑を掛けてはいけないという風潮を見直さないと」と話した。(共同)

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