首相に問わねばならないこと 論説副主幹・豊田洋一

2020年7月31日 05時50分

未来投資会議で発言する安倍首相=30日、官邸で

 新型コロナウイルスの感染が再拡大する中、私たち国民は、感染の恐れと日々向き合い、暮らしや仕事、学びがどうなるか、不安な生活を強いられている。
 現在の感染状況や今後の見通しはどうなのか、そもそも政府のコロナ対策は適切なのか。多くの人が抱く疑問に答えることは、政治の、中でも、安倍晋三首相の責任にほかならない。
 しかし、首相は通常国会閉会翌日の6月18日の記者会見以降、会見を開いておらず、国会の閉会中審査にも出席していない。
 5月25日の緊急事態宣言解除までは頻繁に会見を開き、その内容や自分の言葉かはともかく、自ら説明していたことと比べれば雲泥の差だ。国民の不安や疑問に向き合おうとしているとは、とても思えない。
 首相会見でのメディアの追及は手ぬるい、との厳しい批判は謙虚に受け止める。
 同時に、戦前、軍部を厳しく批判した反骨の新聞記者、桐生悠々きりゅうゆうゆうの「言わねばならないことを言うのは義務の履行」との言葉を思い起こす。首相に今「問わねばならないこと」を国民に代わり問うことは、私たちメディアの義務であり責任だ。
 新型コロナを巡る首相への問い掛けは、突き詰めれば、政府の対策が妥当なのかに尽きるが、ここでは3点に絞ってただしたい。
 (1)感染が再拡大しているにもかかわらず、緊急事態宣言をなぜ出さないのか。感染者が増大して医療崩壊が起きれば、経済にも悪影響が出る。感染拡大防止を優先し、業者への休業要請と損失補償をセットで行うべきではないのか。
 (2)GoToキャンペーンを前倒しで始めた判断は誤りではないのか。感染再拡大のリスクを過小評価してはいるのではないか。感染収束後としていた閣議決定や国会審議と整合性も取れない。
 (3)PCR検査はなぜ増えないのか。政府に増やす意思がないのか、意思はあっても能力が追いつかないのか。国民に注意を呼びかけ、布マスクを配布するだけでは、無策との批判は免れまい。
 首相は直ちに記者会見を開くか臨時国会の召集に応じ、こうした問い掛けに誠実に、そして自らの言葉で語るべきだ。国民への説明責任から逃げることなど許されない重大局面である。

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