「敵基地攻撃能力」の文言なし 自民党がミサイル防衛の提言案まとめる
2020年7月31日 05時50分
自民党は30日、地上配備型ミサイル迎撃システム「イージス・アショア」の配備断念に伴うミサイル防衛の検討チーム会合を党本部で開き、政府への提言案をまとめた。「敵基地攻撃能力」の文言は直接盛り込まなかったが、相手国から日本を狙う攻撃を阻止する能力の保有を検討するよう求めた。
発射前の敵国の兵器などへの攻撃に触れており、事実上の敵基地攻撃能力の保有を促した格好だ。提言案では「相手領域内でも弾道ミサイル等を阻止する能力の保有を含めて、抑止力を向上させるための新たな取り組みが必要」と指摘した。
敵基地攻撃能力に関し、政府は憲法上認められるものの、専守防衛の観点から政策判断として保有を認めていない。提言案で敵基地攻撃の文言を使わなかったのは、先制攻撃になるとの懸念が拭えず、周辺国との緊張を高めかねないことに対し、世論の反対が根強いと判断したためだ。
検討チーム座長の小野寺五典元防衛相は、提言案について「過去の考え方を踏襲している」と強調する一方で「国民の皆さんにより正確に伝わる形を考えた」と述べ、現状では国民の理解が得られていないことを認めた。
◆同様の提言、これまで防衛大綱に反映されず
自民党はこれまでも「わが国独自の攻撃能力(策源地攻撃能力)」(2013年)や「『反撃』を重視した『敵基地反撃能力』」(17、18年)などの保有を政府に提言してきたが、防衛力整備の指針「防衛計画の大綱」の改定時に反映されたことはない。
今回は安倍晋三首相が自ら敵基地攻撃能力の保有を含む国家安全保障戦略の再検討への強い意欲を表明した。それでも、公明党の山口那津男代表は「国際的に緊張を高める政策を取ることのないような配慮をした議論が重要だ」と反対姿勢を崩さず、与党内で合意を得るめども立っていない。
検討チームは31日の自民党関係部会で議論し、8月初めに党の了承手続きを経た上で、新たな国家安保戦略を取りまとめる国家安全保障会議(NSC)の議論に反映するよう首相に申し入れる。(山口哲人、上野実輝彦)
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