アベノミクス実感ないまま失速 景気後退18年10月…その後増税

2020年7月31日 05時50分

 安倍政権下での景気回復は、政府の公式見解より1年4カ月前に終わっていたことが明らかになった。人々の賃金が伸びなかったために恩恵が広がらなかったうえ、後退局面に入ってから消費税増税に踏み切るちぐはぐな政策運営もあらわに。日本経済の実力が高まらないままアベノミクスは失速し、前例のない厳しいコロナ不況と向き合うことになる。(渥美龍太、大島宏一郎)

◆「ぜいたく品は買わないように」

 「好景気の実感?なかったねえ」。巣鴨地蔵通り商店街で野菜の買い物をしていた佐々木正子さん(77)=東京都北区=の思いだ。洋服が値上がりしたと感じ「ぜいたく品は買わないようにしている」。最近は野菜の価格も高騰、「年金暮らしなので節約するしかないのか」とため息をつく。
 今回の景気回復局面は以前より物価が上がるなどして、年金生活者らの暮らしに影響が出た。さらに現役世代の賃上げは物価の上昇に追いつかなかった。
 実際、物価変動の影響を除いた実質賃金の伸び率は2013~18年の間、16年と18年のほかは前年比でマイナス。プラスの18年も調査方法の変更でかさ上げされた結果だ。14~16年には「実質民間最終消費支出」が初めて3年連続で減少している。
 景気動向を検証した研究会座長の吉川洋・立正大教授も回復期の特徴を「賃金が上がらず消費があまり伸びなかった」と説明した。

◆利益を賃金に向けない企業

 対照的に企業は利益を蓄えた。企業がためた利益の総額を指す「内部留保」は18年度に463兆円と、7年連続で最高を更新。一方、企業が稼ぎを人件費に回す割合「労働分配率」は12年度の72%が18年度に66%に下がった。
 経済協力開発機構の17年調査によると、低所得世帯の占める割合「相対的貧困率」は、先進国の中で日本が米国に次ぐ2番目の高水準。非正規雇用の占める割合が上昇し、賃金が伸びにくい環境になっている。
 第一生命経済研究所の熊野英生氏は「コロナ禍もあり、企業が利益を賃金に振り向けない傾向は続くのではないか」と見通す。
 景気回復期に政府は経済政策を打ち続けた。日銀はお金の供給量を当初の約4倍に増やし、政府は4回も経済対策を編成。消費税率10%への引き上げは回復期に2度延期し、後退局面の19年10月に実施した。公式見解ではまだ「回復」アピールし続けていた。

◆コロナ危機から見通せぬV字回復

 現状の景気見通しはコロナの影響により、20年度に過去最悪となる4・5%のマイナス成長を見込む危機的な状況。回復期に経済政策に頼り続けた結果、日本経済の実力は高まらず、安倍首相が繰り返す「V字回復」は見通せない。
 ニッセイ基礎研究所の上野剛志氏は「限界に近い形で政策を続け、コロナ対策の余力が乏しくなった」と指摘。「景気が良いうちに構造改革を進めるなどして、経済の実力を高めておくべきだった」と話す。

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