ストーカーがGPSで居場所を追跡しても「見張り」に当たらず 最高裁が初判断 

2020年7月31日 05時50分
 元交際相手らの車に無断で衛星利用測位システム(GPS)を取り付けて居場所を知ることが、ストーカー規制法が禁じる「見張り」に当たるかどうかが争われた2つの事件の上告審判決で、最高裁第1小法廷は30日、「見張りに当たらない」との初判断を示した。裁判官5人全員一致の意見。

◆ストーカー規制法に規定なし

 同法は住居や勤務先など相手が普段いる場所の近くで見張ることを禁じているが、GPSに関する規定はない。GPSを使ったストーカー被害は絶えず、法改正を求める議論につながる可能性がある。
 山口厚裁判長は判決理由で、同法の「見張り」の定義を「機器を使う場合であっても、相手が普段いる場所の付近という一定の場所で、動静を観察する行為」と判断。離れた場所の車の位置情報を知ることは見張りに当たらないとした2件の2審判決を支持し、検察側の上告をいずれも棄却した。

◆見張り認めた地裁判決、高裁で破棄

 事件の1つは、長崎県の男(53)が2016~17年、元交際相手の車にGPS機器を取り付け、パソコンや携帯電話で位置情報を約600回確認したとするもの。1審佐賀地裁は、車自体を相手が普段いる場所とみなして見張りに当たると判断し、懲役6月を言い渡した。2審福岡高裁は、視覚で直接見る行為がなければ見張りに当たらないとして、1審判決を破棄して審理を地裁に差し戻した。
 もう1つの事件では、福岡高裁が見張りを認めた1審福岡地裁判決を破棄し、被告が元妻を実際に近くで監視したストーカー行為だけを有罪としていた。

◆被害女性「信じられない」と絶句

 GPSを使った行動監視は、ストーカー規制法の「見張り」には当たらないとする最高裁判決に、元交際相手から車にGPSを取り付けられた経験のある女性は、「信じられない」と絶句した。識者はGPSでの監視も規制できるよう、法改正すべきだと指摘する。
 「もしかして私、見張られているのかしら」。関東地方に住む40代の女性会社員は数年前、元交際相手と何度も街中で鉢合わせすることに違和感を抱いていた。あるときはスーパー、あるときは路上。「偶然だね」と声をかけられたこともあった。
 「気味が悪い」と思いながら1年が過ぎたころ、車で外出したときに顔を合わせるケースが多いことに気づいた。車を確かめると、バンパーの裏にテープでグルグル巻きにされた謎の四角い物体が。GPS端末だった。
 警察は捜査に乗り出し、女性の近くに現れないよう、ストーカー規制法に基づく禁止命令を出した。
 被害は収まったが、「今もあの人と同じ型の車を見かけると背筋が凍る。この苦しみはきっと一生続くと思う」とつぶやく。今回の最高裁判決を「市民感覚とかけ離れている。居場所を把握されているのに、見張りではないというのは納得できない」と残念がった。
 検察側は上告審で、2014年9月~18年11月、GPSを使った見張りを同法違反罪で39件立件し、今回の2件を除く37件では罰金刑や懲役刑が確定していることを明らかにしている。

◆識者「早急に法改正を」

 甲南大法科大学院の園田寿教授(刑事法)は「GPSによる監視は実質的には見張りそのもの。社会の実態に法律が追いついていないことが、最高裁判決で明らかになった。被害者の不安を取り除くためにも、早急に法改正すべきだ」と指摘した。(小野沢健太)

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