「周囲や行政が虐待サイン読み取って孤立を防いで」 蒲田3歳女児死亡

2020年7月31日 13時50分

死亡した梯稀華ちゃん(右)と母親の沙希容疑者=知人提供

 東京都大田区蒲田のマンションで女児(3つ)が8日間置き去りにされて衰弱死した事件で、女児は昨年春に区内の保育所をやめてから公的な機関との接点がなくなり、母親の育児放棄がエスカレートして命を落とした。専門家は「関係機関がいち早く虐待サインを読み取り、社会から孤立するのを防ぐことが大切だ」と指摘する。(西川正志)
 警視庁に保護責任者遺棄致死容疑で逮捕された母親のかけはし沙希容疑者(24)=鑑定留置中=は、交際男性に会うため鹿児島県を訪れた6月上旬の8日間、自宅に長女の稀華のあちゃんを放置し、飢餓と脱水の症状で死亡させたとされる。5月上旬の4日間、稀華ちゃんに十分な食事を与えず自宅に放置したとして、保護責任者遺棄容疑で追送検された。
 捜査関係者によると、梯容疑者は離婚後の2017年7月から現場マンションで1人で子育てを始めた。昨春から勤めていた居酒屋では「他の人に世話を頼んでいる」などとうその説明をして、稀華ちゃんを自宅に置き去りにしていたという。
 稀華ちゃんが2歳4カ月だった昨年3月、保育所をやめた時点で社会とのつながりが途絶えた。昨年11月の誕生日以降に受ける3歳児健診も未受診だった。大田区の担当者は受診を促す電話をしたり、今年5月に自宅訪問したりしたが、梯容疑者と接触できなかったという。
 NPO法人児童虐待防止協会の津崎哲郎理事長は「保育所をやめた際や3歳児健診の未受診を虐待のサインと捉え、区や要保護児童対策地域協議会で対応を検討すべきだった」と指摘する。
 一方で、都内の自治体関係者は「母子家庭は珍しくない。保育所をやめたり健診が遅れる家庭もあり、それだけで虐待を疑うことは難しい」と明かす。
 シングルマザーの支援に取り組む日本シングルマザー支援協会(横浜市)の江成道子代表は「母親はこうあるべきだという風潮を恐れ、責められたくないという思いから、自ら社会とのつながりを絶つシングルマザーは少なからずいる」と話す。
 シングルマザーの孤立を防ぐには、周囲や行政がいかに母親との信頼関係をつくれるかが重要で、江成代表は「子どもの誕生日に電話をして様子を聞いてあげたりするなど、何もない時でも定期的に声を掛けるような取り組みが必要だ」と提案する。
 明治学院大の松原康雄名誉教授(児童福祉)は「保育士などが親から話を聞くのは重要だが、アプローチし過ぎると逃げてしまう親もいる」と現場での情報収集の難しさを語る。「妊娠中や出産直後の悩みがサインとなることもある。親が自分から相談してくる関係づくりと見守り体制の構築が重要だ」と訴える。

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