御嶽山の王滝頂上で黙とう 噴火遺族ら慰霊登山「一歩前進の区切りに」

2020年7月31日 12時51分

慰霊登山で御嶽山の王滝頂上に向かう被災者家族ら=31日、長野県王滝村で(中田弦撮影)

 58人が死亡、5人が行方不明になった2014年の御嶽山おんたけさん(長野、岐阜両県、3,067メートル)噴火の犠牲者遺族らが31日、長野県王滝村側の登山道の規制緩和に伴い慰霊登山を行った。標高2,936メートルの王滝頂上への立ち入りが噴火後、初めて許可された。被災者家族会事務局代表のシャーロックひでさん(61)=東京都=は「一歩前進するための一区切りにしたい」と語った。

御嶽山の王滝頂上で、噴火の発生時刻に合わせ黙とうする被災者の家族ら=31日午前11時52分(共同)

 行方不明になっている愛知県刈谷市の野村亮太さんの父敏明さん(60)は「6年間、ずっと会いたい気持ちでいっぱいだった。早く家に帰してあげたい」と述べた。犠牲者でただ1人、王滝頂上山荘で亡くなった浅井佑介さん=当時(23)、名古屋市=の母正子さん(60)ら計10人が参加し、王滝頂上に順次到着。王滝村職員の説明を受け、多くの犠牲者が出た尾根「八丁ダルミ」方面を指さし「初めて見た」などと話した。午前11時52分の噴火発生時刻に合わせ、黙とうをささげた。
 御嶽山では18年9月に長野県木曽町側から山頂(剣ケ峰)までの登山道の規制が解除され、遺族らが山頂に立ったが、王滝村側は安全対策工事が終わらず、9合目避難小屋までの通行に限られていた。王滝頂上から尾根上の登山道などの規制は継続する。
 王滝村は、噴火で壊れた王滝頂上山荘を8月末までに解体し、180人が避難可能な木造施設を建設する予定。山荘で亡くなった人もいたため、被災者家族会「山びこの会」は規制緩和前の入山許可を村に求めていた。
 村は当初、王滝頂上までの規制を7月11日に解除し、前日10日に慰霊登山を認めると発表したが、大雨の影響で安全確認が遅れ、先送りされた。一般登山客向けの規制解除は8月1日から行う。
(共同)

◆「魂を迎えに行き、連れて帰る」

入山規制緩和を前に、慰霊登山で御嶽山の王滝頂上に向かうシャーロック英子さん=31日、長野県王滝村で(野村和宏撮影)

 「王滝頂上に魂を迎えに行き、必ず連れて帰る」。東京都のシャーロック英子さん(61)は31日、御嶽山噴火で犠牲となった義弟の伊藤保男さん=当時(54)=が登った同じルートを王滝頂上まで初めてたどった。今後も被災者家族会の事務局代表として先頭に立ち続ける決意だ。
 保男さんは2014年9月27日、ボランティア仲間5人と王滝口から入山した。王滝頂上と山頂(剣ケ峰)をつなぐ尾根「八丁ダルミ」で噴火に遭遇し、背中に噴石が直撃。仲間2人とともに亡くなった。
 「家族の死を無にせず強く生きなければ」。噴火翌年の15年4月、保男さんの妻で妹のひろ美さん(59)と被災者家族らでつくる「山びこの会」を発足させた。英子さんは事務局代表として、会報発行や行政への要望活動に取り組んできた。
 御嶽山登山はこれで11回目となった。「亡くなった家族は戻ってこないから」と消極的な遺族も少なくない。それでも登り続けるのは、噴火の現実に正面から向き合う覚悟を持てるからだ。「あの日、亡くなった家族が最後に見た同じ景色を見て手を合わせると、不思議と強くなれる。確かにそこに生きたのだと実感できる」
 遺品となった保男さんのザックに入っていた手つかずのサンドイッチは、今も冷凍庫に残してある。「遺族にとって風化はない。でも、毎日泣いているわけにもいかない」。会報6月号の表紙には「歩みを止めずにやります。負けられません」と胸の内をつづった。
(共同)

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