王位戦第2局で逆転を呼んだ攻防手<頂へ 月刊藤井聡太棋聖>

2020年7月31日 13時50分

王位戦第2局、大逆転で木村一基王位(手前)に勝った藤井聡太七段=札幌市で

 今月16日、17歳11カ月で棋聖位を奪取した藤井聡太棋聖(18)。従来、18歳6カ月だったタイトル獲得の最年少記録を30年ぶりに塗り替えた。次は王位戦で2つ目の冠を目指す。今回は、棋聖位獲得の直前に北海道で13、14日に行われた王位戦第2局をお伝えしよう。 (岡村淳司)
 「飛行機はかなり久しぶりで緊張しましたが、空からの眺めを見るのが楽しみでした。無事に着けてよかった」。対局前日、地元の中部国際空港から空路で札幌入りした藤井七段(肩書は当時)は、会見でこうはにかんだ。以前本紙インタビューで、小学生の頃に家族旅行で小樽やニセコを訪れた思い出を語っていた。大の鉄道好きだけに「機会があれば、宗谷本線で北の方に行きたい」と話していたが、その夢は過密スケジュールで実現しなかった。
 本局は相掛かりの戦型となり、2日目、木村一基王位(47)が徐々にリードを広げた。藤井七段は追い込まれ、持ち時間が先に10分を切った。さすがの藤井七段も疲れの色を浮かべたが、なかなか決め手を与えない。最終盤に入ると、相手の猛攻を粘り強くしのぎ、持ち時間が逆転。先に1分将棋に突入した木村王位は、必死に攻め続けた。

藤井七段の逆転を呼んだ攻防手

 図は藤井七段が122手目に5三香と打った局面(便宜上、下側が後手)。木村王位の121手目の1一竜がやや緩手とみて、自玉の玉頭を守りつつ、敵玉の急所を狙った攻防手だ。「ぴったりで、その後はわけが分からなかった」と木村王位。立会人の深浦康市九段(48)は「一手で危ない形からチャンスがある形に持っていった」と舌を巻き、「藤井七段は1分将棋でも間違えない。見えないプレッシャーが木村王位を追い詰めたのかも」と分析した。この手で藤井七段は劣勢の局面を逆転し、シリーズ2つ目の白星をもぎ取った。
 藤井七段は本局で、タイトル戦で初めて封じ手を書いたが、まだ不慣れな様子が見られた。第1局では封筒に記す署名を脇息の上でして、一部でマナー違反と指摘された。今回は、上位者が先に署名するものと思い込んでいたのか、自分で署名しないまま木村王位に封筒を渡してしまい、先に書くよう促された。ミスとも言えない、こんな些細なことまで報じられてしまうのが、藤井七段なのだ。
 北の大地で感じたのは、先輩として藤井七段を導く木村王位の風格ある振る舞いだ。
 札幌対局の直前に九州豪雨があり、60人以上が亡くなったことが、新聞やテレビを通じて大きく報じられていた。それを気にかけていた木村王位は空港に着くや、「封じ手をチャリティーに使ってはどうでしょう」と提案したという。これがきっかけで通常2通の封じ手が3通作成され、うち1通を販売し、収益を被災地向けに寄付することになった。盤上だけでなく、社会にも気配りする王者。若手に見習ってほしい姿勢だ。

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