感染症が核紛争招く危機、核兵器は人間がなくせる ICAN・川崎哲氏に聞く

2020年8月2日 06時00分

被爆75年を迎えた今夏の核廃絶運動の現状について語るICAN国際運営委員の川崎哲さん=東京都新宿区で

 世界で新型コロナウイルスが猛威を振るう中、広島と長崎に原爆が投下されてから75年の夏を迎えた。核兵器禁止条約の年内発効を目指す非政府組織(NGO)「核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)」国際運営委員の川崎あきら氏(51)は「感染症や気候変動が新たな対立を生む中で、核の脅威は高まっている」と、早期の核廃絶の必要性を訴える。 (聞き手・柚木まり)

 核兵器禁止条約 核兵器の開発や保有、使用などを全面的に禁止する史上初めての条約。2017年に国連で122カ国・地域の賛成により採択された。核拡散防止条約(NPT)で核保有を認められた米国、英国、フランス、ロシア、中国のほか、米国の「核の傘」に入る日本などは反対の立場。50カ国・地域が批准してから90日後に発効し、発効後1年以内に締約国会議が開かれる。

 ―コロナが世界的に大流行する中で、戦後75年を迎えた。
 「国の安全を守るために強い軍隊や兵器が必要だと言われてきたが、コロナで多くの人が亡くなる中で、それらは無力だ。人々の命を守るために本当に必要なものは何か。歴史を考える上でも、世界の平和と安全のために何を優先すべきかを考える良いタイミングだ」
 ―核兵器とともに、気候変動と感染症が人間の脅威になっている。
 「20世紀、国々はより強力な兵器を持つことを競い合い、人間を無差別に殺りくする核兵器が大量に作られた。しかし、今日の問題となっている気候変動や感染症には国境がなく、新たな対立と武力紛争の火種になりうる。世界にはまだ1万3000発もの核弾頭がある。核兵器は問題の解決に役立たないどころか、深刻な脅威だ」
 ―ICANは核戦争の悲惨さを訴えてきた。
「現在の世界では、戦争が起きれば核兵器が使われる可能性が高い。一度使われたら核の撃ち合いになり、破滅だ。感染症や気候変動も人類への脅威だが、人間が100%抑えきることはできない。核兵器は人間の手で完全になくすることができる」
 ―国連のグテレス事務総長はコロナ感染拡大を受け即時停戦を呼び掛けた。
 「事務総長は、今こそ人々や国々の『連帯』をと訴えている。コロナを機に、各国は軍備を減らしお金を人々に回すべきだ。日本は地上配備型迎撃システム『イージス・アショア』の計画を断念したが、背景に膨大な費用の問題があった。今必要なのは兵器か医療か。冷静に考えるべきだ」
 ―核兵器禁止条約の批准が7月に40になり、発効まで残り10カ国・地域と迫った。

 「広島、長崎に原爆が投下された8月に批准を目指す国もあり、年内に50に達することは可能だ。発効が近づくほど、日本はどうするかが問われる。発効後1年以内に開かれる締約国会議に、少なくともオブザーバーとして参加すべきだ」
 ―被爆者ら市民の草の根活動をコロナが打撃した。
 「高齢となった被爆者たちは、若者に教わりながらビデオ会議システム『Zoom(ズーム)』を使いこなす。何としても今、伝えなければという思いが強いからだ。オンラインだからこそ世界に発信もできる。学校教育や平和学習に定着していく可能性があると前向きにとらえている」

 かわさき・あきら 1968年、東京都生まれ。東京大卒。2003年からNGOピースボート共同代表。10年から活動に携わるICANは、核兵器禁止条約の実現に尽力したとして、17年にノーベル平和賞を受賞した。

こちらから、これまで本紙で掲載した「2020年 核廃絶の『期限』」の記事が読めます。

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