郊外の白人女性の支持狙うトランプ氏 「彼自身が混沌の原因」との反応も

2020年8月2日 06時00分

<米大統領選「声なき多数派」(上)>

夫とともにオハイオ州の人種差別抗議デモに参加するグラネリさん(本人提供)

11月3日の米大統領選まで3カ月。支持率が低迷するトランプ大統領が「サイレント・マジョリティー(声なき多数派)」に支持を訴えている。52年前、ベトナム反戦運動が高まる中で「法と秩序」を掲げて当選したニクソン元大統領に自らを重ね、大方の予想を覆して民主党のクリントン氏を破った4年前の再現を狙う。トランプ氏がすがる「多数派」とは―。

◆治安不安をあおる

 「声なき多数派は、かつてないほど強い!」「法と秩序を!」。ツイッターで繰り返し訴えるトランプ氏の視線は今、「郊外」に向いている。米国で民主党はリベラルな都市部、共和党は保守的な地方に強固な地盤がある。その中間に当たる郊外は白人の富裕層が多い。米公共ラジオ(NPR)によると、トランプ氏は前回、全米の郊外でクリントン氏に2ポイント差で競り勝った。今回も落とせない。
 特に重視しているのが白人女性だ。「私は郊外を守るが、(民主党候補の)バイデン(前副大統領)は破壊する」。白人警察官により黒人男性が暴行死した事件以降、各地で抗議デモが相次ぐ中、「過激な左翼や扇動者、略奪者ら」(トランプ氏)をひそかに恐れる白人女性が多いとみて、治安の不安をあおる。

◆民主党を選んだ共和党支持者

サラ・ロングウェル氏(本人提供)

 トランプ氏の訴えは届いているのか。中西部オハイオ州シンシナティ郊外に住む学校職員アンドレア・グラネリさん(34)は長年、共和党を熱心に支持してきた。だが4年前は「2人の子どもの将来を考えると、トランプ氏の言動はとても受け入れられなかった」とクリントン氏を支持した。今は新型コロナウイルスや人種問題を巡り、トランプ氏への危機感をさらに強め「バイデン氏はもちろん、州、最も身近な市レベルの選挙でも民主党を支持する」と断言する。
 共和党の政治戦略家サラ・ロングウェル氏は、前回トランプ氏に投票した白人女性も、その後の定点観測の結果「特に郊外で背を向けつつある」と分析する。「多くの女性は前回、ただクリントン氏が嫌いという理由でビジネスマンのトランプ氏に期待をかけた」と述べ、「女性を混沌から守ると訴えるが、女性は彼自身が混沌の原因だと考えている。脅し作戦は通用しない」とみる。

◆ニクソン氏にあやかるのは無理筋

ニクソン・トランプ両米大統領の比較

 専門家の中には、ニクソン氏にあやかろうということ自体に無理があるとの見方も。バージニア大政治センターのアナリスト、カイル・コンディク氏は「ニクソン氏は確かに、反戦デモに批判的な郊外の白人保守層の支持を得て当選した。ただそれは、国民が2期8年の民主党政権に嫌気が差したからでもある」と状況の違いを指摘する。
 ニクソン氏は当選の翌1969年、国民向けにベトナム撤退戦略を発表した演説で、即時全面撤退を求めるデモ参加者とは異なる「声なき多数派」に支持を求め、高支持率を獲得。数字上でも多数派の存在を証明した。ニクソン図書館のティモシー・ナフタリ元館長は「ニクソン氏は『法と秩序』を72年の再選選挙では持ち出さなかった。自ら無秩序、失政を認めることになるからだ」。それは「トランプ氏自身が混沌の原因」という女性の見方とも重なる。(ワシントン・岩田仲弘)

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