<Newsスポット>犯罪死、見逃さない 県警で年間9800遺体扱う 検視官現場リーダー・小倉さん

2020年8月2日 07時26分

遺体に手を合わせる小倉さん=大宮署で

 遺体の様子をつぶさに観察し、事件性の有無を見極める検視官。年間九千八百人の遺体を扱う県警捜査一課の十七人の検視官の現場のリーダーを務める小倉光男警視(59)は「犯罪死を見逃さないことが使命」。新型コロナウイルス感染拡大による困難も伴う中、覚悟を胸に遺体と向き合う。 (森雅貴)
 検視は、病院以外で亡くなり、医師が死亡診断書を作成できなかった場合などに行われ、検視官は医師とともに遺体を確認する。検視官になるには警察庁で専門的な教育を受け、警部か警視の階級であることが条件。「専門的な知識と、冷静な判断力が求められる」という。
 現場では、むやみに遺体に触らず、死因を探す。外傷や持病の有無、発見者と遺体の関係に不自然な点がないか。生前の姿を知る親族や近隣住民への聞き込みなどと照らし合わせる。事件性があれば、裁判所の許可を得て司法解剖を行う。
 小倉さんが検視と出会ったのは春日部署刑事課にいた一九八八年。五年間、検視の手伝いをした。傷んだ遺体にも手を合わせ、丁寧に扱う先輩の姿を目の当たりにし「どんな遺体にも残された遺族がいて、それぞれが無念を抱えている」と強く感じた。先輩に、一つ一つの遺体から学んだことをノートに記しておくようアドバイスされ「腐敗し白骨化する様子」などを記し続けた。ノートは十冊になり、今も見返す。
 忘れられない事件がある。二〇〇三年六月の夜、白岡市のあぜ道で乗用車が燃え、後部座席の床から性別も分からないくらい傷んだ女性(25)の遺体が発見された。焼身自殺の可能性もよぎったが「なぜこの場所で」と違和感があった。
 解剖の結果、首に絞められた痕が残っていて、窒息死と判明。すぐに強行犯の捜査員を呼び、交際相手の男の逮捕につながった。「遺族の無念を少しだけ晴らせた」と手応えを感じた。
 正式に検視官となった一三年には、住宅火災の現場で見つかった遺体や周囲の状況から「事件性あり」と判断。容疑者の早期逮捕につながったことも。
 新型コロナウイルス感染拡大は、検視にも影響を及ぼしている。変死事案は連日のように発生しているが、遺体が感染している可能性があるため、防護服や医療用マスク、ゴーグルなどをフル装着した上で現場に向かうことが必要になった。肺炎が疑われる場合は医師の判断によりPCR検査を行い、結果が出るまでは遺体をウイルス拡散を防ぐ特殊な袋に入れて霊安室などで保管する。「普段以上に神経をすり減らす」と語る。
 それでも「亡くなった人やその親族、友人の無念に応えるため、死因を明らかにするのが仕事」。静かな言葉に、変わらぬ使命感をにじませた。

◆臨場率は大幅に向上 司法解剖態勢に課題

 県警が昨年1年間に検視した遺体は計9847体(全国4番目)に上る。年々増加傾向で、高齢化の影響があるとみられる。そのうち司法解剖した遺体は404体。
 2000年代前半に全国で犯罪死の見逃しが相次いだ。県警も10年には検視官が9人しかおらず、現場に出動する割合(臨場率)も約20%だったが、現在は17人まで増員し、臨場率も94%に向上した。
 一方、県内には司法解剖ができる大学等の施設は少なく、後継者の育成も課題となっている。

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