ラストベルト争奪戦再び 「隠れトランプ派」は今もいるのか

2020年8月3日 06時00分

<米大統領選「声なき多数派」(下)>

 「米国を再び偉大に!」。トランプ米大統領は時折、思い出したようにツイッターにこう書き込む。4年前の大統領選で衰退した製造業の復活を訴え、再選のかぎを握る白人労働者層の支持をつなぎ留めたい思いがにじむ。
 トランプ氏はクリントン氏に総得票差で約300万票下回りながら、東部ペンシルベニア、中西部ミシガン、ウィスコンシン、オハイオなど鉄鋼業などが衰退した「ラストベルト」(さびついた工業地帯)で相次ぎ勝利を収め、選挙を制した。トランプ氏が「忘れられた人たち」と呼んだ白人労働者は、まさに「声なき多数派」だった。

スコット・サイツさん(本人提供)

 オハイオ州トランブル郡の航空宇宙会社のチタン工場で働くスコット・サイツさん(51)は民主党員、労働組合員ながら4年前はトランプ氏に投票した。「民主党はわれわれブルーカラーのことを忘れた。今回もトランプに入れるつもりだ。彼は雇用を約束し、実際に増やしたから」という。「多くの人が言葉には出さないが、そう感じているのではないか。私はそうした『声なき多数派』を代弁していると思う」

◆切り崩し狙うバイデン氏

クレイグ・スミスさん(本人提供)

 一方、中西部ミシガン州ビッグ・ラピッズ市の退役軍人で全米自動車労組(UAW)の元組合員クレイグ・スミスさん(64)は4年前にトランプ氏に投票したが、「愚かだった。もう二度と支持しない」と後悔する。全米に拡大した人種差別抗議デモへの対応などを批判し、今回は民主党候補のバイデン前副大統領への投票を決めた。
 こうした声を背に、ペンシルベニア州出身で労組に強固な地盤を持つバイデン氏は、トランプ氏が支持を求める「多数派」の切り崩しにかかっている。
 バイデン氏は7月9日、同州の金属加工施設で「すべて米国製」と題した経済対策を発表。製造業強化に向け、米製品の購入拡大やインフラ整備、研究開発に7000億ドル(約73兆円)の公的資金を充て「少なくとも500万人の雇用を創出する」と訴えた。

◆「ホワイトハウスは油断した」

 米国第一主義を掲げるトランプ氏のお株を奪うような内容で、トランプ氏は「バイデンは私(の政策)から盗用した」と反発。一方、前回大統領選でトランプ氏陣営の選挙参謀を務めた元側近のスティーブン・バノン氏は、自らのラジオ番組で「ホワイトハウスとトランプ陣営は油断した。バイデンの周りには優秀な人がいる」と冷静に語った。

先月9日、米東部ペンシルベニア州で演説するバイデン前副大統領=AP・共同

 ラストベルトで軒並みバイデン氏にリードを許しているトランプ氏だが、モンマス大がペンシルベニア州で行った直近の調査では、登録有権者の57%が「隠れトランプ支持者」の存在を信じていると答えた。
 同大のパトリック・マレイ世論調査研究所長は「『隠れ支持者』の存在は実証されていない」と指摘。その上で「57%もそう思っていることで、バイデン氏が危うい、後押ししようという動きがむしろ出てくるだろう」と話した。(ワシントン・岩田仲弘、ニューヨーク・赤川肇)

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