テレワーク「隠れ残業」増 「通常より長時間労働になった」51%

2020年8月3日 07時25分
 新型コロナウイルスの感染拡大を機に広がるテレワーク。陥りやすいのが隠れ残業だ。オンオフの切り替えが難しく、夜遅くや休日でも仕事をしてしまう人は多い。「昼間の働きぶりが見えない」として、テレワーク時に限って残業を認めない企業もあるが、仕事量が出社時と変わらなければサービス残業の温床に。テレワーク率を七割にするよう政府が再び企業に求める中、仕事量や時間管理がより重要になっている。 (添田隆典)
 「業務終了です」。東京都内の編集プロダクションに勤務する四十代の女性は、上司にLINE(ライン)でそう送った後、こっそり残業を始める。
 社員約十人の職場は四月の緊急事態宣言以降、交代で一人当たり週二日ほどテレワークを実施。始業の午前九時に「業務開始」、終業の午後五時に「終了」を報告することがルール化された。残業は「一日サボらずに働いていたかが見えない」として、テレワークに限り禁止された。
 しかし「定時で切り上げられる日の方が少ない」と女性。原稿の執筆や取材先とのやりとりなど、こなすべき仕事量は同じだからだ。結局、テレワークの日は二時間ほど隠れ残業をすることに。当然、残業代は支払われない。「会社は社員の仕事量を把握すべきだ」と不満を募らせる。
 労働組合の中央組織「連合」が、四月以降にテレワークを経験した全国千人を対象に行った調査では、「通常の勤務より長時間労働になることがあった」と答えた人は51・5%。一方で「テレワークで時間外や休日労働をした」と回答した三百八十一人のうち、「時間管理がされていない」「申告しづらい雰囲気がある」などの理由で、「残業代を申告しないことがあった」という回答は65・1%。「勤務先に残業代を認められないことがあった」とした人も56・4%と半数を超えた。従業員の規模が小さい企業ほど残業代が認められない傾向が強く、勤怠管理がされていない割合も高かったという。
 ただ、会社の指示による時間外労働や休日労働に対し、労使協定に基づく割増賃金の支払い義務が生じるのは、テレワークでも出社時でも同じだ。テレワークに詳しい社会保険労務士の寺島有紀さん(32)=東京=は「指示がなくても、業務量が過大で残業せざるを得ない場合に残業代を認めないのは、労働基準法に照らして問題」と指摘。特にテレワークは、職場にいる時と違って仕事ぶりが上司らに見えない。その分、働く側は仕事量で成果を示そうと長時間労働に陥りがちという。
 とはいえ、残業代を払えばいいわけでなく、大事なのは長時間労働を減らす仕組みだ。厚生労働省は二〇一八年、テレワークを実施する企業に向け長時間労働を防ぐための方法を提示。深夜や休日のメール送付の抑制や社内システムのアクセス制限などを挙げている。寺島さんも「時間外や休日の連絡は控え、終業時間後の返信は不要と取り決めをしておくのも大事」とアドバイス。勤務時間外は業務とつながることができない環境づくりを強調する。
 今回、テレワークを導入した企業の中には、十分な制度設計がないまま走りだしたところが少なくない。定時で終われるようにするには、職場の労務管理も大事だ。「その日に達成すべき仕事量を確認し、時間内にどれだけできたかは、電話やメールでもチェックできる」と指摘。「そうすれば自宅での仕事のやり方に問題があるのか、与える仕事量を見直すべきなのかが分かってくる」と話す。その上で「社員一人一人の能力や適性を見極め、評価することが、これまで以上に求められる」としている。

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