ラテンの陽気さに励まされ サッカー男子メキシコUー23代表コーチ・西村亮太さん<拝啓トーキョー>

2020年8月4日 06時00分
 新型コロナウイルスの感染者が現在進行形で増えているアメリカ大陸。メキシコも例外ではないが、国内サッカーの前期リーグは7月24日(日本時間25日)に開幕した。「うじうじしている暇はないから、行動しようと。機転が利くというか、どこまでもポジティブというか。そういう気質がメキシコにはすごくある」。サッカー男子メキシコUー23(23歳以下)代表コーチの西村亮太さんは、白い歯をのぞかせた。

3位となった昨夏のパンアメリカンで銅メダルを手に笑みを浮かべる西村亮太さん=いずれもリマで(メキシコサッカー連盟提供)

 リーグ戦に先駆け、カップ戦が7月上旬にスタート。この国で暮らし始めて10年。国民的人気を誇るサッカーは、国難と呼べる状況でも変わらずに愛されている。

◆予選延期、リーグ戦は打ち切り

 東京五輪の1年延期が決まった3月末。メキシコで月内に予定されていた北中米カリブ海予選も延期となった。年明けから3日間ほどのミニ合宿を何度も重ね、代表の完成度は高まっていた。2012年ロンドン大会以来の金メダルを目指す東京に向け、まずは出場権を手中に収めるつもりだったが、お預けに。「肩透かし。虚無感みたいなのがあった」と振り返る。
 リーグ戦は中断し、そのまま打ち切りに。代表活動も止まった。首都メキシコ市の自宅で今なお続く長い自粛生活の始まり。ただ、西村さんは前向きに捉えている。この期間中、週に2度スタッフとオンライン会議で強化策を話し合い、過去の試合映像を見返し、練習内容を練り直した。
 「どうしたら強くなれるのか、現状のものをより良くするための時間ができた」。予選がいつ行われるのかは未定だが、限られた枠を巡って再び選手間の競争が生まれることもプラスだという。

◆生涯で一度だけの機会

 サッカーが世界中から最も注目される瞬間は、4年に一度のワールドカップ(W杯)だろう。それでも西村さんは五輪を「特別な大会」と言い切る。五輪代表の編成には年齢制限があり、大半の選手にとっては生涯で一度きりの機会。それは大会が終われば契約が切れる首脳陣も同じだ。
 プロ経験のないまま異国へ渡り、指導者としてのキャリアを積んできた。第2の故郷の一員として臨む五輪の開催地が母国という巡り合わせ。「すごい偶然の重なり合い。感慨深いものがある」とかみしめる。

◆どんなときも下向かず

 身動きが満足に取れない中、コロナ禍で苦しむ人に対し音楽演奏で勇気づける家族や、国民食であるタコスを無料で配る店主の存在をニュース番組を通じて知った。どんなときでも下を向かない明るさに勇気づけられるとともに、実感したのは自身がいかに恵まれた環境に置かれているか。職として選んだラテンのサッカーは前に進んでいる。東に1万1000キロ離れた国から、来夏、東京で特別な大会が開かれることを願っている。 (中川耕平)

ハイメ・ロサーノ監督(中央)らと肩を組む西村亮太さん(右から2人目)


 にしむら・りょうた 大阪・大塚高、天理大ではDFとしてプレー。筑波大大学院で学生コーチを務めた後、2010年8月にメキシコ留学。翌年夏に帰国後、再びメキシコへ渡り、現地の指導者学校を卒業した。複数クラブでコーチを歴任し、18年12月から現職。35歳。大阪府出身。

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