対中の「甘さ」非難合戦…トランプ氏vsバイデン氏

2020年8月4日 06時00分
 11月3日の米大統領選まで3カ月。通例は内政問題が中心となる選挙戦は、対中国政策が主要争点に浮上する異例の事態となっている。トランプ大統領は劣勢の中、民主党バイデン前副大統領の過去の対中発言などを「弱腰」と猛攻撃。バイデン氏もトランプ氏の同盟軽視が米国の立場を弱体化させたと主張、非難の応酬となっている。(ワシントン・金杉貴雄)

◆広告に巨費投入

 「(新型コロナウイルス対応で)中国からの入国を禁止した時、バイデン氏は『外国人恐怖症だ』と言って批判した」「彼は対中国で40年間間違ってきた」
 トランプ氏陣営は春以降、「中国に甘いバイデン氏」を印象づけるテレビやネットの広告を次々制作。バイデン氏の「中国の台頭は前向きな進展」とする過去の発言や、習近平しゅうきんぺい国家主席とグラスを掲げる映像を組み込むなど、「中国寄り」を殊更に強調している。
 トランプ氏陣営は昨年1月以降、大統領選の広告に約2億ドル(212億円)の巨費を投じ、先月だけでも3000万ドル(約32億円)を支出。その中心に対中国を巡るバイデン氏への批判、中傷を置いている。

◆「対中」はトランプ氏の切り札

 トランプ氏は現在、新型コロナなどの対応で批判を浴び、世論調査平均でバイデン氏に約7ポイントのリードを許している。頼みの経済は失速し、「岩盤」のはずの共和党保守層の中でも支持率が落ち、もがいている。
 「中国」を持ち出しているのは、その局面打開を図るためだ。民主党のオバマ前政権は中国に協調的だったとされ、バイデン氏は副大統領として中心にいた。
 「バイデン氏が副大統領の時、中国は米国から(貿易で)年数1000億ドルを奪い、米国は1万もの工場を失った」。トランプ氏は7月の会見でバイデン氏の名を30回近く連呼し執拗に批判。自らの実績への評価ではなく、相手への「ネガティブキャンペーン」に活路を見いだそうとしている。
 トランプ政権は香港やウイグル、南シナ海問題などを巡り次々と対中強硬策を発動。ポンペオ国務長官は7月、中国の発展を後押しして民主化を促す歴代政権の「関与政策」を転換し、共産党一党支配を激しく非難する異例の演説を行った。そこには、中国の台頭に7割近くが「否定的」という現在の世論に支持されるとの思惑もある。
 一方で、トランプ氏は中西部の有権者へのアピールのため、中国側が米国の農産物や工業製品の輸入を大幅に増やすとした1月の米中貿易合意の維持を重視。「トランプ氏自身は人権問題などで中国共産党を批判したくないのが本音」(プリンストン大・フリードバーグ教授)ともいわれる。

◆バイデン氏も反撃 対中強硬アピール

 バイデン氏側も黙っていない。トランプ氏が1月に習氏の新型コロナ対応を称賛したことを「トランプ氏こそ中国に甘く、感染拡大を招いた」と反撃する。
 バイデン氏は今春の米誌への寄稿で、トランプ氏の「米国第一主義」が同盟国との関係を傷つけてきたと批判し、「中国に厳しくなる必要がある。同盟国や友好国と団結し、中国の悪行や人権侵害に立ち向かう」と宣言した。特に人権問題ではトランプ氏よりも強い姿勢をみせている。
 ただ、気候変動などでは協調を模索する意向も示す。米シンクタンク戦略国際問題研究所(CSIS)のグレーザー上級顧問は、バイデン氏の対中政策を「同盟国と緊密に連携し、中国を押し返すための多国間協力を進めるだろう」と指摘している。

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