「集団感染、人ごとじゃない」観光地の東京・島しょ部 緊張の夏休み

2020年8月5日 05時50分
 新型コロナウイルス感染者の急増で、東京都内の島しょ部が緊張の夏休みを迎えている。観光客なしでは島の産業は成り立たない現実もあるが、島の医療体制は脆弱ぜいじゃくで1度感染が広がれば影響は甚大だ。住民からは、50人以上の感染者が確認された鹿児島・与論島での集団感染に「人ごとじゃない」と切実な声が漏れる。期待と不安が交錯している。 (岡本太)

父島行きのおがさわら丸に乗り込む人たち=4日、東京都港区の竹芝桟橋で

◆八丈島のコロナ病床わずか2床

 「与論島と八丈島は、規模も似ている。同じような感染が起きれば緊急事態だ」。八丈島観光協会(八丈町)の田村真吾事務局長は、7月の与論島の大規模感染を引き合いに出し、不安を口にした。
 「東京から一番近い南国」を掲げる八丈町は東京から約300キロ。4月上旬から観光客への来島自粛要請を続けていたが6月19日に解除した。少しずつ来島者は戻り始め、8月はお盆あたりまで予約が多く入っているという。一方、島内でコロナ患者を受け入れられる専用病床は町立病院の2病床のみ。島外から多くの観光客が訪れることは、医療体制が脆弱な島にとっては大きなリスクとなる。
 観光は島にとって重要な産業だ。ホテル・旅館だけでなく、ガイドやタクシー、飲食店など観光を収入源としている住民は多い。4~5月は来島自粛要請もあって、観光客はほぼゼロ。田村さんは「多くの旅館や事業者はこれ以上もたない。できる限りの感染防止をしながら、腹をくくってやるしかない」と語る。

◆予約で埋まる小笠原行きの船

ゲートで乗客の検温をする係員=4日、東京都港区の竹芝桟橋で

 都心から南へ約1000キロ。「東洋のガラパゴス」と称される小笠原諸島(小笠原村)は7月1日から、観光客の受け入れを再開した。本土からの唯一のアクセス方法は、父島行きの週1便の船「おがさわら丸」。感染対策で定員を通常の約半分に制限しているが、夏休み中の便はほぼ予約で埋まっている。
 東京・竹芝桟橋では4日、8月最初の「おがさわら丸」が出港した。スーツケースなどを抱えた観光客ら約400人が次々に乗船。都内の会社員倉島宏行さん(56)は「島で感染が広がってしまうのが心配。自分が感染している可能性もあると思って慎重に行動したい」と話した。

豊かな自然に囲まれた小笠原諸島の父島(小笠原村観光局提供)

 小笠原村には医療機関は1カ所の診療所しかなく、本土への搬送は自衛隊の航空機頼み。もし感染者が出れば事態はより深刻だ。小笠原村観光協会の山谷健さんは「もし2桁の感染者が出れば島は崩壊してしまう。観光客の方には、ウイルスを広げないという意識で楽しんでほしい」と呼び掛ける。

◆島に着いた途端にマスク外す人も

 都内島しょ部の2町7村は現在、全島で観光客を受け入れ中。7月23日からの4連休は、7000人超が島を訪問。観光客の中には島に到着した途端、マスクを外す人もいたという。
 各町村は宿泊施設や飲食店での感染防止を徹底し、都も抗原検査のキットを配布するなどして支える。都議会で唯一の島しょ部選出議員の三宅正彦都議は「感染防止も観光も、島にとってはどちらも重要。悩ましい。本当に悩ましい」と繰り返した。

離島での新型コロナ感染 東京都では5月に御蔵島(御蔵島村)で男性1人の感染が判明。男性には直前に本土への渡航歴があり、それ以降感染者は確認されていない。鹿児島県最南端の離島・与論島(与論町)では7月以降、これまでに50人以上の感染者を確認。島内の病院で感染者を受け入れきれず、ヘリなどで本土の病院に搬送する事態となった。与論町は来島自粛を呼び掛けている。

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