<つなぐ 戦後75年>戦争なき世へ 静かな祈り 

2020年8月7日 07時19分
 広島に原爆が落とされて七十五年となった六日、県内各地で慰霊や次世代へ体験を語る取り組みが行われた。ただ、新型コロナウイルスの感染拡大により準備していた行事をやめるなどの影響があり、静かな祈りの日となった。(加藤木信夫、中里宏)

◆入間の中学で被爆者が講演

広島の当時の市街図を使い、生徒たちに被爆状況を説明する中島寿々江さん=入間市立金子中学で

 「皆さんの世代が、これ以上核兵器を造らせない、保持しない世の中に変えてほしい」
 入間市立金子中学校で、被爆体験の語り部、中島寿々江(すずえ)さん(86)=狭山市=が講演し、三年生約八十人を前に訴えた。今も「被爆の日」は、「当時の記憶が頭の中で再現されてつらくなる」という。
 中島さんは爆心地から約三キロの自宅で被爆。父親は血だらけになり、自らも左ひじにガラスが突き刺さった。爆心地近くに住んでいた祖母は炭状になって亡くなり、無傷に見えた九歳と六歳のいとこも一週間後、苦しみながら息絶えた。
 「七十五年前の広島は阿鼻叫喚(あびきょうかん)、地獄だった」と中島さん。爆心地近くから真っ黒になってやって来た人の両手から、ワカメのように皮膚がぶら下がる悲惨な姿を、言葉を詰まらせながら生徒たちに伝えた。
 早津嘉也(よしや)さん(14)は「戦争はむごいもので、二度と起こしてはいけないと分かった」。山田紗良(さら)さん(14)は「きょう聞いて終わりにするのではなく、次の世代に伝えていくことが私たちの役割」とうなずいた。
 市では例年、全十一市立中学で年間を通して中島さんの講演を実施しているが、今年は新型コロナウイルスの影響で金子中だけになった。一般向けには、八日午後二時半から市博物館で先着三十人、入場無料で実施する。

◆丸木美術館で「とうろう流し」

手作りのとうろうを都幾川に流す子どもたち=東松山市で

 東松山市の原爆の図丸木美術館では、「とうろう流し」が行われた。例年、この日は著名人の講演や音楽公演などのイベントを終日開いてきたが、コロナの影響で今年は中止。参加者約五十人が、平和と核兵器廃絶の願いを込めて手作りのとうろう約四十個を、美術館裏の都幾川に流した。
 とうろうには、親子連れや高校生らが、絵の具で思い思いに絵を描き、「平和」「せんそうがおきなくなりますように」などとメッセージを書き入れていた。
 美術館の鶴田雅英代表理事は「今年は広島・長崎の被爆から七十五年。(放射能の影響で)草木も生えないと言われた広島は復興したが、私たちはいまだに核兵器をなくせていない。しかし、核兵器禁止条約に世界中の人たちが動きだし、光も見えている。原爆の図は悲惨だが、悲惨な絵の向こう側にある生命を感じてほしい」と述べ、参加者が黙とうをささげた。

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