付かず離れず/陰の立役者/刑事の良識

2020年8月7日 08時11分

松尾博史(40歳)社会部 

◆付かず離れず

 「きょうの新型コロナ感染者数の見通しは?」「まだ確定値ではありませんが、二百三十、四十(人)程度かと」
 東京都の小池百合子知事が都庁を出入りする際、報道各社が質問する「ぶら下がり」は、私の仕事の一つだ。
 知事選の際は「公開したカイロ大の卒業証書は卒業時に受け取ったものですか?」と質問。想定の範囲内だったようで「手書きで時間がかかるので、少しずれます。はい、そういうことです」と言って立ち去った。
 再選が確定した投開票日の夜、選挙事務所で他社の記者が「国政への転身は考えていないか」と繰り返した時は、「当選確実になったばかりですから」とムッとした表情をしていた。
 甘い質問ばかりでは「手ぬるい」と読者のおしかりを受ける。批判的質問ばかりでは本音を引き出せない。コロナ対策も取材も「距離」の取り方は難しい。

◆陰の立役者

 小池知事の記者会見でおなじみのフリップボードは、各施策の担当部署が用意している。
 例えば七月三十日の「感染拡大特別警報」のフリップ。総合防災部の職員が「感染拡大の警戒を強く呼びかけましょう」と提案し、パソコンでデザインを作り、プリンターで印刷してボードに貼り付けた。
 担当職員は「象徴的場面として、テレビや新聞などで取り上げられる効果があります」と狙いを語る。知事の「見せ場」のような華々しい会見の裏側には、職員の工夫がある。施策が「看板倒れ」にならないかも含めて、注視していきたい。

◆刑事の良識

 初任地の浜松市の警察署に、親子ほど年の離れた部下にも物腰柔らかに「君、さん」付けで話しかける刑事課長がいた。
 上下関係が厳しい警察社会。「丁寧に話されるんですね」と尋ねると、こんな答えが返ってきた。「彼らはそれぞれの家族を養う一家の大黒柱。重い責任を背負っている人を、軽々しく怒鳴ってはいけないよ」
 今年六月、大企業にパワハラ対策を義務付ける法律が施行された。昨年度の都への労働相談で、パワハラなどの「職場の嫌がらせ」は約一万件。パワハラを巡るニュースを聞くたび、ベテラン刑事を思い出す。
<まつお・ひろし> 福岡県出身。2002年入社。静岡、栃木、茨城、福井県で勤務。東京都庁を担当。福岡名物「ごぼう天うどん」を好むが、東京には博多ラーメンほど店がなくて残念。

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