TikTok 米中対立で正念場 取引禁止命令で売却迫る 中国内からは「身売りするな」の声も

2020年8月8日 05時50分

6日、ティックトックを運営する中国のネット大手「バイトダンス」北京オフィス=坪井千隼撮影


 【北京=坪井千隼】日本でも人気の中国系動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」が、米中対立の焦点となり苦境に追い込まれている。トランプ米大統領は6日、アプリを運営する中国企業の取引を禁止する大統領令に署名。同中国企業に対し、米国内の事業を米国企業に売却するよう圧力をかけた。中国のネットユーザーからは「中国を捨てて身売りするのか」と売却に反発する声が上がっている。

◆利用者8億人、企業価値15兆円

 ティックトックを運営するのは、中国のネット大手「北京字節跳動科技(バイトダンス)」。中国の動画投稿アプリの海外版として2017年に始まり、若年層を中心に各国で人気に。米メディアによると利用者は8億人を超え、未上場ながら企業価値は1400億ドル(約15兆円)に達する。
 だがトランプ氏は、米国民の情報が中国共産党に渡ると懸念を表明。6日、中国版LINEの通信アプリ「微信(ウェイシン)」を運営する中国IT大手「テンセント」とともに、米国内での取引を45日後に禁じる大統領令に署名した。ティックトックの米事業は、現在交渉中の米マイクロソフト(MS)などによる買収が成立しなければ、使用が禁止されそうだ。
 インドでも、6月に中国との国境で起きた軍事衝突を受け、ティックトックなどの使用が禁止に。日本でも一部地方自治体が公式アカウントの運用を停止するなど制限し始めている。

◆「競争力ある企業つぶす」中国は猛反発

 中国政府や中国メディアは猛反発。共産党機関紙、人民日報系環球時報は3日の論説記事で、「米国は自国の企業の脅威になると恐れ、中国で最も競争力があるハイテク企業をつぶそうとしている」と批判した。
 一方でバイトダンスは生き残り策を模索。香港紙サウスチャイナ・モーニング・ポストは、同社がティックトック関連事業を切り離し、独立した新組織に引き継ぐことを検討していると伝えた。中国誌「財新」は6日、同社が大規模なデータセンターをアイルランドに開設すると報道。米事業の売却後に欧州へ経営をシフトするためで、事業本社をロンドンなどに置くことも検討しているという。

◆「ティックトック弱腰」批判の声も

 ティックトックの「脱中国」ともいえる動きに、中国版SNS「ウェイボ」などでは、米国批判とともにバイトダンスに対しても「弱腰になるな。中国を出て行くのか」「欧米企業になるのか」といった批判の声も上がる。
 バイトダンスは7日、大統領令を受けて「正式な手続きを経たとは思えず、驚いている。米国顧客の利益を守るため可能な対応をとる」とコメント。中国メディアによると、バイトダンスの創業者、張一鳴氏は、社員向け書簡で「方針は決まっていない」としつつも、「企業としてわれわれは米国の法律に従わざるをえず、選択肢はない」と理解を求めた。

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