レバノン爆発は「人災」、政府批判強まる 倉庫管理の港湾関係者16人拘束

2020年8月8日 05時50分

レバノン・ベイルートの爆発現場付近で、損傷した建物の中にいる人たち=6日(AP=共同)


 【カイロ=蜘手美鶴】レバノンの首都ベイルートで起きた大規模爆発を巡り、危険な化学物質を放置した「人災」だとする政府への批判が強まっている。経済の要となる港も破壊され、もともと危機に陥っていたレバノン経済の長期低迷は避けられず、周辺国への影響も懸念される。
 「なぜあんな場所に6年間も保管したのか。政府は正気とは思えない」。音楽家タレック・バシャーシャさん(49)は本紙の電話取材に声を荒らげた。爆発現場は飲食店や政府機関も多いレバノン中心部の港付近。現在もがれきの下や海中で行方不明者の捜索が続く。
 地元メディアによると、死者は154人、負傷者は5000人超。数10人の行方不明者がいるほか、約30万人が家を失って避難生活を余儀なくされている。
 地元紙などによると、爆発したとみられる硝酸アンモニウムはロシアの貨物船の積み荷で、2014年に港湾当局が裁判所の命令を受けて押収。その後、当局は裁判所に撤去命令を求めたが、倉庫に放置されたという。フランス語教師のマリア・ハジュアフマドさん(33)は「政府が知らなかったはずがない。全員辞任するべきだ」と話した。
 レバノンでは昨秋から経済低迷が加速し、今年3月に初のデフォルト(債務不履行)に陥った。同時期から新型コロナウイルス感染症も拡大。負傷者の増加で医療体制が逼迫している上、地元紙によると爆発で港の食糧貯蔵庫が破壊され、小麦の国内貯蔵は残り1カ月ほど。スーパー店主のアブー・マハディさんは取材に「経済の心臓部の港が壊れ、レバノンは死んだも同然だ。無責任な政府が私たちを殺した」と嘆いた。
 高まる批判をかわそうと、政府は「9日までに調査結果を出す」と原因究明に躍起だ。6日には倉庫の管理をしていた港湾関係者16人を拘束。積極姿勢をアピールするが、「政府が責任を取るべきだ」とディアブ首相らの辞任を求める批判の声も強まっている。
 地中海に面し、中東と欧州をつなぐレバノン。反政府的な動きで国内情勢がさらに不安定になる可能性もある。戦略地政学が専門のカーネギー中東センター(レバノン)のサード・モハイオ研究員は「今回の爆発が、国民の間に真の『爆発』を引き起こす可能性は高い。レバノン国内の混乱が地域を不安定にさせるのは間違いない」と指摘する。

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