<高校野球2020夏>東大会 帝京劇的9年ぶりV 東京一かけ、あす東海大菅生戦

2020年8月9日 06時50分

サヨナラ勝ちで東東京大会を制し、喜ぶ帝京ナイン。右手前は関東一の市川投手=いずれも大田スタジアムで

 2020年夏季東西都高校野球大会は八日、東大会の決勝が大田スタジアムであり、延長十一回の末、帝京が3−2で関東一にサヨナラ勝ちし、優勝を果たした。帝京が夏の頂点に立つのは二〇一一年以来9年ぶり。十日に開かれる東西決戦で西大会を制した東海大菅生と対戦し、今年の東京ナンバーワンを決める。
 帝京は前田三夫監督の積極的な采配が光った。1点を追う九回、1死から四球で出塁すると初球にエンドラン。一、三塁としたところで初球にスクイズを決め、土壇場で追いついた。十一回は1死一、二塁から5番新垣熙博(きはく)選手が左越えのサヨナラ二塁打を放った。
 昨夏に続く連覇を狙った関東一は、重政拓夢選手の右中間を破るタイムリーで五回に勝ち越し、試合の主導権を握った。投手陣も四回から八回まで1人の走者も許さない完璧な投球をみせたが、勝利目前で捕まった。

◆監督・主将談話 

<帝京・前田三夫監督> エラーからリズムが崩れ、立て直しに時間がかかった。九回は形を変えてみたのが良かった。甲子園はないが、長年遠ざかっていた優勝ができたのは有意義。
<同・加田拓哉主将> サヨナラの場面は新垣なら決めてくれると思っていた。関東一には昨秋の都大会で負けているので勝ててよかった。代替大会を開いてもらい感謝。東西決戦も帝京らしい野球をしたい。
<関東一・米沢貴光監督> 九回を抑えて勝ちきらないといけなかった。継投やタイムの取り方を反省している。甲子園の目標が消えて選手たちの気持ちは不安定になったが、最後は彼らが意地をみせてくれた。
<同・渡辺貴斗主将> 帝京は打ってくると思ったがバントで仕掛けてもくる。強いなと思った。九回のエンドランは裏をつかれてびっくりした。最後は相手打者の力がすごかった。

<熱球譜>全員野球夏の宝物に 関東一、悔しさ後輩に託す

 サイン通りの直球が、レフト方向に大きく飛んでいった。「俺らの夏終わっちゃった」。渡辺貴斗捕手(3年)は、打たれた市川祐投手(2年)に「おまえの代で帝京に借りを返して頑張れ」と託し、涙した。
 1点リードで継投したエース今村拓哉投手(3年)は、五回からの4イニングはすべて打者3人で打ち取った。「受けていて、今まで以上に変化球も切れていた」。だが九回、わずかに制球が乱れ、帝京の主砲に四球を許す。さらにエンドランとスクイズを決められ延長戦にもつれ込んだ。
 追いつかれるきっかけの、ボールとなった1球に「違う配球はあったのでは」と悔やむ。それでも「今村も勝負した結果。相手の小技もすごかった」と勝者をたたえた。
 昨夏全国ベスト8の先輩たちを見て「来年は絶対」と目標だった甲子園。中止を聞いた時は悔しかったが、主将として「自分がすぐ切り替えないと悪い雰囲気になる」と前を向いた。3年生20人は大会に全員が出場した。最後まで「全員で戦う思い」でここまで来られた。特別な夏の経験は宝物だ。 (神谷円香)

<ヒーロー>チーム鼓舞、名門復活 帝京3年加田・拓哉主将

関東一−帝京 3回裏帝京2死一、二塁、左越えに先制二塁打を放つ加田主将

 この瞬間のために3年間を過ごしてきたはずだ。それなのに、優勝を決めた直後、喜びを爆発させることも拳を突き上げることもなかった。わずかに笑顔をみせ、淡々と整列に向かった。この先に甲子園は、待っていない。
 春夏通じて出場26回、3度の全国制覇を誇る名門は近年、苦戦していた。最後に甲子園の土を踏んだのは二〇一一年まで遠ざかる。
 「おれが帝京を変える」。そう意気込んで大阪から上京した。昨秋の都大会は準優勝。一一年以来の好成績に「今年の帝京は違う」ともてはやされた。最後の夏は当然、甲子園で輝くつもりだった。
 そんな未来はコロナでついえた。代替大会があると分かっても、気持ちは盛り上がらない。前田監督から「代替大会は3年生の引退試合じゃないんだぞ」と一喝されて目を覚まし、主将として、途切れそうになる気持ちを何とかつないだ。
 決勝では先制タイムリーでチームを鼓舞し、九回は土壇場で同点のホームを踏んだ。試合後に「甲子園はないけど東大会の頂点に立ててうれしい」と漏らしたのは本音だろう。異例ずくめの夏に手にした幻の甲子園切符もまた、帝京を語るストーリーとして語り継がれていく。 (加藤健太)

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