限界集落、障害者が救う 全日本ろうあ連盟70周年 映画「咲(え)む」 横浜で上映

2020年8月9日 07時02分

映画「咲む」の一場面((c)全日本ろうあ連盟創立70周年記念映画製作委員会)

 全日本ろうあ連盟が創立70周年を記念して製作した映画「咲(え)む」が、横浜市内で今月開かれる上映会を皮切りに、全国で公開される。監督は市内在住で自身もろう者の早瀬憲太郎さん(47)で、脚本も手掛けた。「ろう者の差別問題を取り上げるのではなく、手話を言語とする人が主体となって社会的な問題を解決する物語にした。弱者とされる障害者が地域を助ける視点は、新しく面白いと思う」と話す。(石原真樹)
 主人公は看護師資格を持つ耳の聞こえない女性。ある村の診療所で看護師として採用されるはずが見送りになり、代わりに地域おこし協力隊として働くことに。高齢化の進む村が抱える課題に真っ正面から向き合う彼女の姿に、住民たちの意識も変わっていく−。
 早瀬監督は十八歳まで過ごした奈良県に帰省するたび「人が減るだけではなく、生きる意欲がどんどん減っている」空気を感じ、限界集落は身近な問題だった。全国を取材する中で、各地で増えている限界集落には高齢者だけでなく障害者が取り残されているケースも多いと知り、物語に組み込んだという。

手話で作品について語る早瀬さん=県庁で

 撮影は二〇一九年十〜十一月で、県内でも小田原、秦野、相模原市などで撮った。映画の舞台として、景色や家の造りから特定の場所を想起させない、どこにでもありそうな村の風景を探したという。「ただ、県内の人が映画を見れば、あそこだ、と分かるかも」と笑う。
 作品に込めた思いについて「人は人との出会いで成長し、変わることができる。聞こえる・聞こえないに関係なく、人と人が出会う大切さを伝えたい」と力を込める。タイトルの「咲む」は、万葉集から取った。「笑顔になる、花が咲く、実が熟すの三つの意味がある。この映画にぴったり」
 連盟が〇九年に初めて製作した映画「ゆずり葉」は、聴覚障害のために仕事が選べないなど障害による苦しみを描いた。その後、手話言語条例が各地で広がってろう者や手話などへの理解が進んできたとして、倉野直紀連盟理事は「障害のあるなしにかかわらず、共に暮らす社会に変わってきている。障害のある人も地域を変える力があることを描くこの映画は、今の時代に合っている」と話す。
 十六日の横浜市西公会堂での上映会はチケットが完売し、九月六日に横浜市健康福祉総合センター(横浜市中区)で上映予定。問い合わせはろうあ連盟の映画製作委員会=03(3268)8847=へ(平日のみ)。

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