<備える 台風19号の教訓>(1)避難生活 コロナで「密」に不安

2020年8月9日 07時34分

避難所開設訓練で検温を受ける避難者役の職員(右)=鉾田市で

 昨年十月の台風19号による久慈川などの氾濫で大きな被害を受けた大子町。今年七月八日にも久慈川が氾濫危険水位に達し、台風19号の記憶が町民の頭をよぎった。
 気象庁の統計では、上流域の福島県塙町で一時間最大雨量二七・五ミリの強い雨が降っていた。大子町では大雨洪水警報が発令され、久慈川流域の五地区に住む約四千九百人に避難準備情報が出た。
 台風19号と大きく食い違うのは、新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、避難所での「三密」(密閉、密集、密接)回避対策が求められている点だ。今回、町内の温泉施設など二カ所に設けた避難所に避難したのは八十三人。ソーシャルディスタンス(社会的距離)の確保などに腐心したが、コロナへの不安があったのか、利用者は思いのほか少なかった。町総務課の吉成和将(かずゆき)主任は「(密集しがちな避難所より)親戚や知人の家に避難した人もいるのでは」と推察する。
 警備員の高村正義さん(73)は台風19号の際、一カ月ほど避難所で生活した。今回は避難対象地区から外れたものの、もし対象地区だったとしても、避難所に行くのはためらったという。「間隔をとるといっても、避難所には人がたくさん集まるから、コロナは心配だ」
 県防災・危機管理課のまとめでは、台風19号で開設された避難所は、十月十三日午前七時に最多五百二十六カ所に上り、約二万人が避難した。
 県内で住家被害が最も大きかった水戸市では、六十五カ所の指定避難所に二千四百四十二人が避難した。市防災・危機管理課は「密な状況の避難所もあった」と振り返る。
 避難所の「密」を避けるため、内閣府は四月、可能な限り多くの避難所を設置することなどを都道府県に通知。これを受けて県は五月、体調不良者向けの避難所の選定や、毎時二回以上の換気などの対策を各市町村に示した。
 各市町村は現在、コロナ対策を盛り込んだ避難所開設の訓練に取り組んでいる。七月十九日に実施した鉾田市は、受付で避難者の体調を確認し、三七・五度以上の発熱や呼吸困難といった症状があれば、別の避難所に誘導するなどの手順を確認した。会場となった体育館には、感染対策のために購入したテントや間仕切りが並んだ。
 市危機管理室の冨田茂室長は「職員の意見も取り入れて感染対策を取り、少しでもリスクを少なくしたい」と力を込める。
 住宅が被災するなどの理由で避難が長引くケースでは、「密」になりがちな避難所での生活を早く解消し、応急仮設住宅を設置することが急務だ。
 台風19号で自宅が被災し、今もプレハブ型仮設住宅に入居する大子町の高橋利文さん(55)は「仮設なら避難所と違い、家にいるのと一緒で、住んでいてコロナはあまり気にならない」と語る。
 仮設住宅を早期に提供しようと、常陸大宮、下妻、常総の三市と境町は、災害時に移動式仮設住宅の提供を受ける協定を日本ムービングハウス協会(北海道)と結んでいる。
 移動式は、比較的短期間で設置できるのがメリットだ。「七月の熊本の水害では、私たちより先に仮設住宅の建設に着工した業者よりも、早く引き渡しができた」と協会の田内玄史(はると)さん。仮設住宅のあり方も問われる。
   ◇   ◇
 本格的な台風シーズンが迫っている。台風19号は人的被害だけでなく、建物や主要産業の農業に大きな打撃を与えた。備えは十分なのか。現状を報告する。(この連載は水谷エリナ、宮本隆康、松村真一郎、鈴木学が担当します)
<台風19号> 正式名称は「令和元年東日本台風」。2019年10月12日に日本に上陸し、12日夜から13日未明にかけて本県を通過。県内では那珂川と久慈川や支流の12カ所で堤防が決壊したほか、堤防を水が乗り越える越水なども相次ぎ、浸水や土砂崩れの被害が広がった。常磐道の水戸スマートICが水没し、JR水郡線の袋田−常陸大子間で鉄橋が流されるなど、交通インフラにも甚大な影響が出た。

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