郵便投票 民主に風 コロナ禍で拡大、妨害受けづらく<2020年米大統領選 攻防・投票率(下)>

2020年8月10日 05時50分

アイリーン・オルムステッドさん=本人提供

 「新型コロナウイルスへの懸念で、郵便投票は私たちにとって必要不可欠な存在になった」
 米大統領選の激戦州の一つ、東部ペンシルベニア州ピッツバーグに住むアイリーン・オルムステッドさん(81)は、そう力説する。
 女性の政治参加を推進する団体のメンバー。新型コロナの感染拡大が収まらない中、郵便投票の利用を地域で呼びかける。「大幅に増えると事務が遅れ、投票が間に合わないかもしれない」と心配し、自らは既に郵便投票用紙の送付を申請。「人々はできるだけ早く手続きする必要がある」と訴える。

◆96年7.8%が16年には21%に

 米国では近年、郵便投票が拡大してきた。国勢調査によると、1996年の大統領選は全投票中7・8%だったが、2016年は21%に増加。別の連邦選挙支援委員会の調べでは、同年は約24%にも上った。
 今年は、新型コロナの感染リスク回避でさらに拡大する。米紙ワシントン・ポストによると、全50州のうち全有権者に郵便投票の用紙か申請書類が送付されるのは17州。ほか25州でも郵便投票が幅広く利用でき、兵役や病気など厳格な理由を必要とするのは8州だけになった。

5日、米ワシントン州シアトル郊外で、州知事選や連邦議会選の予備選の郵便投票用紙を仕分ける選管スタッフ=AP

 新型コロナのまん延で各州では投票所が大幅に削減され、投票妨害に苦しむ黒人有権者らマイノリティー(人種的少数派)は、投票機会が一層狭まることが懸念されていた。
 だが、投票妨害を比較的受けにくい郵便投票の拡大は、そうした状況を一変させる。黒人など少数派の支持が多い民主党からは「ゲームチェンジャーだ」と期待の声が上がる。

◆少数派投票しやすくなることに危機感

 これに激しく反発するのが共和党のトランプ大統領だ。「郵便投票は不正が横行する」「外国に介入される」と執拗に主張。民主党支持の少数派が投票しやすくなることに危機感を募らせる。11月の大統領選延期にまで言及した。
 だが、共和党幹部はトランプ氏の姿勢を疑問視する。世論調査では共和党支持者を含め全体の9割以上が、新型コロナを理由とした郵便投票を支持しているからだ。するとトランプ氏は「フロリダなど共和党知事の州なら郵便投票は安全だ」と言いだした。
 懸念は、郵便投票が過去最多だった前回を大幅に上回ると、集計や確認作業で遅れや混乱が起きる恐れがあることだ。決着まで長期化する可能性もある。
 一方、トランプ氏が陰謀論のように「郵便投票の不正」を強調するのは、民主党のバイデン前副大統領に対し支持率で劣勢となっている中、敗北しても結果を認めないための布石との見方も浮上している。
 ブッシュ(子)元大統領とゴア元副大統領が争った00年の大統領選はフロリダ州の開票で大混乱し、数え直しと最高裁での訴訟を経て決着が12月にずれ込んだ。トランプ氏は7月のインタビューで結果を受け入れるか問われ「その時の状況次第だ」と明言せず含みを持たせた。(ワシントン・金杉貴雄)

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