<ひと ゆめ みらい>障害者の自立を描いた映画 初監督 田中悠輝(たなかゆうき)さん(29)=江戸川区

2020年8月10日 07時05分

もやいの活動の打ち合わせをする田中悠輝さん=西新宿で

 障害者が自立して生活する様子を描くドキュメンタリー映画「インディペンデント リビング」で初監督を務めた。生活困窮者の支援現場にも足を運びながら、生きづらさを抱える人々が、自分らしく生きる姿を追い掛けている。
 「うまい、最高」。電動車いすの男性は、介助者にたばこの火を付けてもらう映画のシーンで笑顔を見せた。事故で頸髄(けいずい)を損傷し、首から下にまひが残る。自宅では、介助の指示をしながら入浴し、料理し、ベッドのシーツを替える。
 映画には、リスクや責任を負いながらも、親元や施設ではない自由な自立生活に挑む障害者たちが登場する。失敗する姿も含めて、それぞれ個人の魅力が、そのままに映し出される。
 明治学院大を二〇一三年に卒業後、困窮者支援の認定NPO法人「抱樸(ほうぼく)」(北九州市)で働いた。路上生活経験のある男性に、花見で撮影した写真を渡したときだ。ウインクのように片方の目をつぶる写真に、男性は「遺影にする」と喜んだ。その人らしい明るい表情だった。「生きた証しでもある遺影に選んでくれた。その人が一番輝いている場面を撮りたい」とカメラを持つようになった。
 一六年からは、江戸川区にある自立生活センターの介助ヘルパーとして働く。そこで記録用に撮影していたが、事務の仕事をしていた映画制作・配給会社の鎌仲ひとみ代表や、映画にも登場する全国自立生活センター協議会代表の平下耕三さんらに背中を押され、映画制作に本格的に乗り出した。生活困窮者の支援現場にも関わり、一七年から支援団体の認定NPO法人「自立生活サポートセンター・もやい」(新宿区)でも働く。
 障害者も生活困窮者も、「かわいそう」といった特定のイメージが持たれ、異質な対象としてみられがちとし、「そうした社会の決めつけが生きづらさになる」と指摘する。筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者への嘱託殺人事件が七月に発覚し、尊厳死を求める声が聞かれたが、「そもそも生きるための装置が社会に足りない。惨めにならざるを得ない環境的な要因がある」と問題の本質を突く。
 自立のためには、依存先を増やすことが必須だ。そしてそれは、障害の有無や、生活困窮の具合にかかわらない。「温かくて健全で多様な関係を地域につむがなければいけないし、そうしたものを社会に開いていきたい」。そう、カメラを回し続ける。(中村真暁)
<インディペンデント リビング> 自立生活にチャレンジする障害者らを追ったドキュメンタリー映画。ぶんぶんフィルムズ製作で、代表の鎌仲ひとみさんがプロデューサーを務めた。98分。都内では3月に公開された。1800円でネット配信もしている。詳細は作品ホームページから。

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