<どうなる格差 同一労働同一賃金>非正規公務員の休業手当 緊急宣言中の不支給多発

2020年8月10日 07時26分
 新型コロナウイルスの感染拡大に伴う緊急事態宣言発令中、休業を余儀なくされた地方自治体の非正規公務員に対し、休業手当を支給していない例が多かったことが問題になっている。本来、雇用側には労働基準法に基づき支払う義務があるが、自治体側は「休業は宣言に伴う『不可抗力』」としている。感染者の増加によっては再び休業要請が出る可能性もあり、対応が注目される。 (佐橋大)
 「給食再開まで来なくていい」。津市の市立学校で働く非正規の給食調理員は四月中旬、上司から無給の自宅待機を告げられた。全国で休校が始まった三月二日以降は、校内で調理以外の仕事をしていた。給料は手取りで月約十二万円。「正規の調理員は出勤でき、給与も支払われているのに」と待遇差を痛感した。
 市教育委員会は五月、希望者に対し、国が国民に一律十万円を配る「特別定額給付金」の支援業務を紹介した。ただ調理員としての出勤扱いでなく、減った収入を補うアルバイト的な扱い。いくらかを手にした調理員がいる一方、市教委によると、家庭の事情で応募できない人もいたという。
 労働基準法では、雇用者側の都合で労働者を休業させた場合、平均賃金の六割以上を休業手当として支払わなければならないと定めている。一方で▽外部の事故が原因▽事業主が通常の経営者として最大の注意を尽くしても避けられない事故−という二つの要件を満たせば「不可抗力による休業」とされ、休業手当の支払い義務はなくなる。
 総務省、文部科学省は三月、休校や休館になった施設で働く非正規職員にも働く場を確保するよう、各自治体に通知した。だが、都道府県や広域連合など全国三千三百十三団体を対象にした総務省の調査では、五月一日時点で非正規職員を休業させた部署・施設がある団体は五百三十五にも。うち休業手当を支給していない部署・施設があるのは百八十五。全てが「不可抗力による休業」を理由に挙げ、同省も「支払い義務のある団体はゼロ」とした。
 同じ時期、NPO法人官製ワーキングプア研究会(東京)がインターネットで行った「新型コロナウイルスによる公共サービスを担う労働者への影響調査」には正規、非正規を問わず二百三十五人が回答。無給の自宅待機または特別休暇を命じられた職員は合わせて十八人で、一人を除き非正規だった。職種は、給食調理員のほかDVの相談支援員、学童保育などの子どもの支援といった暮らしに密着したサービスが占めた。
 東海労働弁護団(名古屋市北区)事務局長の白川秀之弁護士は「『不可抗力による休業』の適用は、労働者を守る観点から限定的であるべきだ」と指摘する。「そもそも今回の休校や休業は『要請』であって、法的拘束力はない」とも。
 こうした中、労働組合による交渉で方針が転換された例もある。兵庫県三田市は、休校を機に始まった給食センターの臨時職員四十七人の自宅待機をすぐに解除。調理業務でなく、調理設備の清掃や研修などに振り替えて出勤扱いとした。
 四月には、正規、非正規の格差をなくすことを目指す地方自治体の新制度「会計年度任用職員」がスタート。非正規職員の多くが新制度に移った。地方自治総合研究所研究員の上林陽治さん(59)は「地域に不可欠なサービスを提供する労働者の多くは非正規」とした上で、「安定したサービスのためには、安定した処遇が必要。休業手当は本来、一律に支給されるべきで、非正規の間でも地域や職種で違いがあってはならない」と訴える。
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