<備える 台風19号の教訓>(2)不断の改善と検証を

2020年8月10日 07時28分

那珂川の国田大橋付近に試験設置された越水検知センサー。黒いポールの白い部分で水位を検知する=水戸市で(常陸河川国道事務所提供)

 那珂川にかかる国田大橋(水戸市)付近の土手に黒いポールが立つ。試験設置された越水検知センサーだ。水が触れると、水位を常時監視する国土交通省常陸河川国道事務所(水戸市)に伝わる。
 常陸河川国道事務所は、氾濫が起きやすい場所に設置する越水検知のセンサー開発を進めるなど水害対策を急ぐ。堀内輝亮・河川担当副所長は「人員の増強、見る技術の向上、危険水位の見直しが、昨年十月の台風19号などを踏まえての改善点になる」と説明する。
 台風19号では、那珂川は県内三カ所で堤防が決壊し、支流を含めて氾濫したが、常陸河川国道事務所は氾濫発生情報を出せなかった。同じく氾濫した久慈川でも同様だった。氾濫発生情報は、決壊などを確認した場合に発表される。警戒レベルは「命を守るための最善の行動」が求められる最も高い5だ。
 住民に危機感が伝わらず、逃げ遅れにつながった可能性があった。後手の対応に赤羽一嘉国交相が謝罪に追い込まれた。
 河川氾濫情報をなぜ出せなかったのか。堀内副所長は「二つの河川で同時に複数箇所で決壊したのは初めてで、しかも夜間だった。破堤の確認ができない中で情報が錯綜(さくそう)してしまった」と釈明する。
 その反省から、事務所の洪水対応の態勢を二十八人から四十三人に増強し、メディアや市民からの問い合わせ窓口もつくった。久慈川、那珂川の計三十カ所で監視カメラの新設も決めた。
 観測所のデータも再度確認した。台風19号の際、那珂川の水府橋(水戸市)で従前よりも早い水位上昇が確認されたため、氾濫危険水位(警戒レベル4)を六・二メートルから五・八メートルに引き下げるなど、危険を伝えるタイミングを早めた。堀内副所長は「今までの履歴も見て、台風でも(局地的な豪雨になる)線状降水帯でも、これでいいだろうという水位にセットした」と自信をのぞかせる。
 一方、自治体側も情報伝達の難しさを感じている。
 昨年十月十三日、台風19号で那珂川支流が越水し、周辺に水が流れると、水戸市は午前二時半、浸水地域に避難指示を発令。さらに三時半にはその他の浸水想定区域にも発令した。前段階の避難勧告は前日午後四時に出していた。市内で死者は出なかったものの、逃げ遅れた百七十人がヘリやボートで救出された。
 逃げ遅れの原因の一つが、緊急に避難を求める「避難指示」と、全員の避難を求める「避難勧告」の違いの分かりにくさだ。避難指示も勧告も警戒レベルは4だ。
 「『避難指示が早く出ていたら…』と言う人もいた。本来は勧告の段階で避難してほしい」。市防災・危機管理課の坪井正幸副参事は悩ましげに語る。
 市は逃げ遅れゼロを目指し、住民への啓発とともに、避難指示では切迫感を伝えるために防災無線でサイレンも鳴らすとしている。
 国は避難勧告を廃止し、避難指示に一本化する方針を打ち出しているが、それは来年以降のこと。今年の台風シーズンには間に合わない。
 茨城大の台風19号災害調査団で情報伝達などを調べている若月泰孝准教授(気象学)は、行政と住民双方に注意を喚起する。
 「災害時の情報伝達は、行政がどれくらい危険な状況かを具体的に伝えられるかがカギになる。夜間でも状況を正確に把握し、早く正確に伝える態勢づくりと不断の検証が必要だ。住民の側でも、どういう状況になったら避難するという基準を家族や地域で共有しておくことを勧める」

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