報道の自由、早くも崩壊危機 香港警察がメディアを初の家宅捜索

2020年8月11日 05時55分
10日、香港の蘋果日報本社に家宅捜索に入った警察官=蘋果日報提供、AP

10日、香港の蘋果日報本社に家宅捜索に入った警察官=蘋果日報提供、AP

 【上海=白山泉】中国政府が香港の統制を強める香港国家安全維持法(国安法)が施行されて1カ月余り、同法違反の疑いでメディア関係者に捜査の手が及んだ。香港警察当局は10日、中国共産党に批判的な日刊紙「蘋果日報(アップル・デイリー)」の創始者の黎智英(ジミー・ライ)氏を逮捕。同紙本社も家宅捜索し、記者の取材資料なども調べた。香港の報道の自由は国安法施行で早くも危機に直面している。
 同日午前10時ごろ、本社の家宅捜索に訪れた警察官は200人。編集局のフロアをテープで封鎖し、逮捕した黎氏を同行して捜査した。蘋果日報は緊張感が漂う捜査の様子をネットを通じて生中継。「新聞社に将来があるかどうか、今は分からない」。黎氏は中継するカメラに向かって報道の自由に対する懸念を吐露した。
 香港メディアによると、警察の捜査令状では報道関連の資料までは捜査対象に含まれていなかった。ただ蘋果日報の労働組合は、多くの警察官が記者の資料を閲覧したと指摘し、「明らかに報道機関の権益を侵犯している」と批判した。香港記者協会も記者個人の物品や取材資料にまで捜査が及んだことを問題視。「情報源が守れず、メディアの権力監視の機能をそぎ落とすものだ」と、捜査の法的根拠を示すよう求めた。
 これに対し警察は「逮捕者の事務所が編集局のフロアにあるのでこうした資料も捜査せざるを得なかった」と弁明した。
 一方、中国政府主管のシンクタンク「全国香港マカオ研究会」の劉兆佳(りゅうちょうか)副会長は香港メディアに「反政府メディアへの批判に加え、香港の反中勢力を外部勢力と結託させないという中国政府の決心、能力、意思を示すものだ」と主張。公共放送の香港電台の顧問委員会も同日、社員に国安法の認識を推し進める方針を決めるなど、すでにメディア側の萎縮が始まっている。
 民主活動家の黄之鋒(こうしほう)氏は蘋果日報の編集局フロアを警察が見張っている写真をツイッターに投稿し「これは報道の自由の終わりであり、ジャーナリストにとって最も暗い日だ」とコメントした。

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