「これ以上放置やめて」 パートナーシップ制度、所管官庁なく国は推進に及び腰

2020年8月11日 05時55分
 同性カップルを公的に認める「パートナーシップ制度」の導入自治体が、全国50以上に急速に広がっている。当事者の権利保障に向けた第一歩となり、平等に扱われる機会も増えてきた。だが、制度は各自治体が条例や要綱で定め、国の所管官庁がないことから、国内の導入状況や利用数の把握が難しい。支持者からは国の積極的な関与やLGBTなど性的少数者への理解、差別禁止を進める基本法づくりを求める声が出ている。(奥野斐)

◆50自治体以上に制度

性的少数者への理解を広げようとパレードする「東京レインボープライド2019」の参加者たち=東京都渋谷区で

 認定NPO法人虹色ダイバーシティ(大阪市)と東京都渋谷区の共同調査によると、6月30日時点で全国51自治体、1052組に証明書類が交付された。7月からは新たに川崎市や三重県いなべ市など5市町が制度を始め、8月には兵庫県川西市が導入。9月から京都市も制度を始める。首都圏や政令市、九州での導入が目立ち、本年度中には60自治体を上回る見込みだ。
 制度は2015年、渋谷区と世田谷区で始まった。同性カップルを自治体が認める意義は大きく、承認されたカップルは区営や市営住宅に入居できたり、病院で家族として扱われたりするようになりつつある。証明書類の提示で、携帯電話の家族割や勤務先の福利厚生を受けられる例も増えた。
 世田谷区でパートナーシップ宣誓をした同性愛者の男性(35)は、家探しで区内の不動産屋にパートナーと出向いた際、嫌な顔をせず対応してもらえたことがうれしかった。以前、別の区では男性2人での入居は断られた。今回は宣誓書受領証を出して入居できた。「制度がある自治体だと、万が一の時も関係を証明できる安心感がある」と話す。

◆民間団体が調査

 導入自治体や交付組数は虹色ダイバーシティが報道などの情報を基に各自治体に電話して集計、定期的に発表してきた。昨年度からは調査費用の一部をみずほフィナンシャルグループの支援でまかなっている。
 導入自治体数の増加に伴い、調査の人手や全国の情報をチェックするのが大きな負担に。そこで、渋谷区は今年6月、同法人と共同調査を行う協定を締結。区が自治体に統一の調査フォームをメールで送って情報収集、集計は同法人が担当し公表する。
 「制度の増加状況と交付数を発信すること自体が周知や啓発になる」。渋谷区男女平等・ダイバーシティ推進担当課長の永田龍太郎さんは支援の理由を説明する。

◆所管はまちまち

 民間団体が調査せざるを得ない背景に、国の消極的な姿勢がある。
 指定都市市長会は18年7月、性的少数者にかかわる施策を総合的に調整し、一元管理する組織を明確にするよう国に要請している。だが今でも、差別や偏見など人権問題は法務省、雇用や労働問題は厚生労働省、学校現場は文部科学省と担当が分散。各自治体も男女共同参画の担当課だったり、人権部署だったりとまちまちだ。
 自民党の性的指向・性自認に関する特命委員会は「LGBT理解増進法」の議員立法を目指すが、実現のめどは立っていない。党関係者によると、所管官庁を内閣府とすることで検討中だが、そこも決まっていないという。
 「同性パートナーシップ・ネット」(東京)共同代表の池田宏さん(60)は「LGBTに関する基本法がなく、所管する省庁もない。国としてこれ以上放置することなく、調査や施策を進めてほしい」と話した。

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