<ふくしまの10年・コットン畑は紡ぐ>(1)交流で咲く、復興の知恵

2020年8月11日 07時46分

コットン畑で話し合う根本賢仁さん(左)と吉田恵美子さん=広野町で

 六月末、広野町の浅見川沿いのオーガニックコットン(有機綿)畑を訪ねると、すきを手に、一人で作業する根本賢仁(まさひと)さん(73)の姿があった。
 例年ならば首都圏などからボランティアが訪れ草取りや間引きを手伝ってくれた。コロナ禍の今年は来ない。「どうやったら少人数で効率的にやれるか試しているところ」
 二〇一一年三月の東京電力福島第一原発事故で、福島の農業は大打撃を受けた。食べる物を作っても引き取り手がなく、田畑を諦める農家もあった。
 いわき市で災害ボランティアセンターなどを運営していた吉田恵美子さん(63)が中心となり、耕作放棄地などでコットンを作るプロジェクトが始まった。復興を支援したい個人や企業、大学などのボランティアが支える。今は周辺市町も含め約二十カ所に畑がある。
 広野町の畑を管理するNPO法人の代表を務める根本さんは津波で家を流された。地震の後、高台に逃れ、十メートルぐらいのびょうぶのような波が堤防を超えるのを見た。住んでいた集落は引き潮にのまれた。
 いわき市で避難生活を送りながら、広野町で津波で流された品々の収集や写真の修復にあたった。「やらなければ、何の記憶もなくなってしまう」。何者かに中身を持ち去られたとみられる空の宝石箱もあった。
 町に頼まれ、仮設住宅の管理人をしている時に吉田さんさんたちのグループに出会った。「ボランティアが来てくれるのがコットン畑のいいところ。交流から復興の知恵も生まれた」
 しかし企業の中には震災十年の節目で終了を予定しているところもある。畑に案内してくれた吉田さんの顔が曇った。「コロナでさらに撤退が早まっている」
(早川由紀美が担当します)
◇ご意見はfukushima10@tokyo-np.co.jpへ

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