<ふくしまの10年・コットン畑は紡ぐ>(2)回収の古着 支援物資に

2020年8月12日 07時24分

古着の山が吉田恵美子さんの原点だ=いわき市で

 原発事故で生じた耕作放棄地などでオーガニックコットン(有機綿)を育てるプロジェクトは二〇一二年に始まった。中心となった吉田恵美子さん(63)=いわき市=は震災前、NPO法人ザ・ピープルで古着の回収、再利用に取り組んでいた。
 発足は一九九〇年。バブル景気で廃棄物が増え続け、ごみ問題やリサイクルへの注目が高まっていた。
 地元の現状を知ろうと、仲間とともにごみ収集車の後を付いていき、観察することから始めた。「もったいないけど捨てているもの」という住民アンケートを実施したところ、一位になったのが衣類だった。
 団体の二十周年を記念したシンポジウムを開いた二カ月後に震災は起きた。
 家は瓦が落ち、後に大規模半壊と認定された。夫が屋根に上って修繕にあたっている中、原発事故のニュースが飛び込んできた。
 吉田さんが子どものころ、父親は常磐炭鉱で働いていた。明治以降、地域の基幹産業だった炭鉱は石油などに押されて衰退。親が職を失い、北海道に引っ越す小学校の友達もいた。中学の時には吉田さんの父親も転職した。
 そのころ、茨城県東海村にある原子力科学館に父親と一緒に行った。「こんなすごいエネルギーがあるんだ」。家族、地域の歴史としてエネルギーの変遷を体感した吉田さんの胸に、鮮烈な記憶として刻まれた。
 かつて「未来のエネルギー」と感じたものが暴走するのを目の当たりにし「今後、どういうことが起きるのか、想像できなかった」。多くの人が避難し、いわきの街はゴーストタウンのようになった。
 二十代だった娘を避難させた後、三月十六日からザ・ピープルの活動を再開した。倉庫の古着は支援物資となった。
 ◇ご意見はfukushima10@tokyo-np.co.jpへ

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