<ふくしまの10年・コットン畑は紡ぐ>(3)苦境の農業 綿栽培に活路

2020年8月13日 07時06分

コットン畑で雑草取りをする吉田恵美子さん=いわき市で

 古着は時に、人の人生の立ち直りを手助けしたり、命そのものを救うこともある。東日本大震災前から古着の回収、再利用に取り組んでいたいわき市のNPO法人ザ・ピープル理事長の吉田恵美子さん(63)は支援物資としての古着の力を実感していた。
 市の福祉部門から頼まれ、面接に行くスーツがない人や、明日着る服すらないという人に古着を提供したことがあったからだ。
 着のみ着のままで体育館などに避難している人々に届けるため、倉庫の古着の山から防寒具や靴をより分け、社会福祉協議会に運ぶことから震災後の活動は始まった。
 救援活動を続けるうちに知り合った県外のボランティア団体から資金援助を得て、避難所で被災者が食べたいものを自分たちで作ることができる炊き出しも開始した。
 材料を調達しようと訪ねた市内の農家は苦しんでいた。「今まで真っ先に子や孫に食べてほしいと思って頑張って作っていた野菜を『食べたくない』と言われ、やめるしかないという声も聞いた」。放射能汚染の懸念から、市場でまったく取引されない状況に追い込まれていた。
 その年の夏、首都圏の女性経営者らと、被災地で復興に取り組む女性たちの交流会が宮城県で開かれた。東京のNPO法人JKSK(女性の活力を社会の活力に)の主催で、吉田さんも参加した。
 その席で農家の苦境を明かすと、東京でオーガニックコットン製品を販売する会社を営む渡辺智恵子さんから綿栽培を提案された。
 それまで携わってきた古着回収も、繊維にかかわる営みで共通点がある。「繊維の誕生から、お墓の番人(リサイクル)まで地域循環でやれればいいな」。光が見えた。
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