<備える 台風19号の教訓>(4)農業大国 ハウス補強 知恵絞る

2020年8月13日 07時16分

農業用ハウスの補強に使ったスクリューアンカーを手にする園部優さん=水戸市で

 台風19号が県内を通過した直後の昨年十月十三日は、早朝から青空が広がった。しかし、水戸市藤井町などでネギを栽培する園部優さん(64)が、那珂川支流の藤井川沿いの畑の様子を見に行くと、水があふれ始めていた。上流域に降った雨が「時間差」で下流に到達したのだ。ほどなく近くの堤防が決壊し、畑は水没。農業用ハウスも天井近くまで漬かってしまった。
 園部さんは「大きな勢力の台風が毎年のように来るようになってしまった。自らで対策、対応するのが生き残る道だ」と強調する。昨年は台風19号だけでなく、九月の台風15号の強風でもハウスが甚大な被害を受けた。台風や秋の長雨への警戒心は例年以上に強い。
 藤井川沿いのハウス四棟のうち、二棟は台風15号で損壊。新しく建て替えたハウスは、先がらせん状の「スクリューアンカー」を使って強化した。残る二棟も台風19号水害で全体が浮き上がってしまったため、パイプの本数を増やして補強した。
 台風19号では、ネギを露地栽培している畑にも水が流れ込んだ。この畑では一角に深さ約一メートルの穴を掘り、水害時に水をためられるように工夫した。「台風の時季は風に強い品種を育て、水はけのいいところに作付けする」と園部さん。
 本県は、農業産出額全国三位(二〇一七年)の「農業大国」。それだけに台風19号と台風15号でも農業分野の被害が突出した。
 県のまとめでは、台風19号による県内の農林水産業の被害額は九十七億三千十万九千円で、一九八九年以降の台風被害では最悪。市町村別では、久慈川や那珂川などが氾濫し、住家被害も深刻だった水戸市、常陸大宮市、常陸太田市の順で被害が大きかった。
 台風15号による被害は六十億五千四百八十五万四千円。鹿行地域を中心に、強風による農作物の倒伏やハウスの損壊が目立った。
 県農業技術課によると、本格的な台風シーズンを前に、県内十二カ所の普及センターを通じ、JAや組合員らにハウスの保守管理や強化を促す予定だ。「補助事業について知らなかったり気にしなかったりした人もいる」(中嶋直美課長補佐)として支援策についても周知していく。
 いずれにしろ、農家自身が対策を講じざるを得ない。
 県農業技術課は、ハウスの強化策の一つとして、太いパイプによる建て替えを推奨する。だが、費用が高く、鉾田市でメロンを育てる田山浩志さん(59)は「被害を受けた時の損害も大きい」と難色を示す。結局、九十センチ間隔で並んでいたパイプを七十五センチ間隔に狭める方法で強化した。
 園部さんは自分に言い聞かせるように語る。「できる限りの対策を取り、いいネギを育てようと前を向いてやるしかない」

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