とびきり怖〜い絵本人気 最後までハラハラドキドキ… 疑似体験 強い心養う  

2020年8月13日 07時30分

子ども向けの「怖い本」コーナー=東京都港区のクレヨンハウスで

 好奇心旺盛な子どもが大好きな「怖い本」。長く読み継がれてきた定番作品に加え、ここ数年、思い切り怖がらせるタイプの作品が台頭している。暗がりが減り、現実で怖い体験をすることが少なくなった現代。子どもたちを震え上がらせながらも、引きつける本とは−。 (今川綾音)
 一つ目小僧や鬼が次々に出てきて、恐ろしい形相で怖がらせる「こわめっこしましょ」(絵本館)や、見開きページからはみ出さんばかりのリアルな妖怪の絵に、おどろおどろしい説明が添えられた「大接近! 妖怪図鑑」(あかね書房)…。東京都港区にある子どもの本専門店「クレヨンハウス」の怖い本コーナーには、「おしいれのぼうけん」(童心社)といった長年読み継がれている作品とともに、二〇一〇年代以降に出版された新顔が並ぶ。
 売り場担当の馬場里菜さん(33)は「今は、子どもたちを思い切り怖がらせる絵本が人気」と話す。廊下や便所など暗がりが多く、暮らしの中で怖い体験ができた昔と異なり、安全優先で、どこでも明かりが照らす現代。「怖い体験をする場としての役割を本が担っている」と背景を分析する。

思い切り怖がらせるタイプの絵本。宮部みゆきさん(左上)や京極夏彦さん(右上)の作もある

 子ども向けの怖い本の作り手は「どんなに怖くても、最後はほっとできる」物語を心がけているが、最近はあえて怖いまま終わる作品が増えている。その代表例が、一一年スタートの岩崎書店の「怪談えほんシリーズ」だ。作者には、宮部みゆきさんや京極夏彦さんら、大人向けの怪談の名手がそろう。
 シリーズ十一作目の最新作、有栖川有栖さん作の「おろしてください」は、道に迷った男の子が、知らずにお化けの列車に乗り込んでしまう物語。現実世界に戻れそうな話の流れに読み手がほっとした直後、予想外の結末を迎える。
 同社編集部の堀内日出登巳(ひでとし)さん(47)は「怖いというネガティブな感情を味わわせまいと、大人が子どもから怖いものを遠ざけたり、作り手がブレーキをかけたりする傾向が気になった」と企画のねらいを説明。ただ、当初は大人からの反応は厳しく、「子どもに読ませられない」「どうしてこんな怖い本を置くのか」といった声が書店や図書館などに寄せられたという。
 しかし、子どもに人気が出たことで大人の評価も一変。今では新作が待ち望まれるシリーズに育った。堀内さんは「『この後どうなったんだろう』と想像力を膨らませる余地があるのが面白さ。疑似体験として怖い経験を積み、乗り越えることが、強い心を養うことにつながる」と話す。
 馬場さんによると、怖い本は保護者や園の先生など、子どもが安心できる大人が読んであげるとよいといい、「子どもは『怖いよ〜』と大人に甘えられることもうれしい。ぎゅうっと抱き締めて、コミュニケーションの一つとして怖い思いをすることを楽しんで」と助言する。

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