「和楽器バンド」立ち上がる 廃業危機の東京和楽器に草の根支援

2020年8月14日 07時37分

2019年1月、ライブで熱演する和楽器バンド=さいたまスーパーアリーナで

 近年の需要低迷や新型コロナウイルスの影響で廃業を決めた三味線の老舗メーカー、東京和楽器(東京都八王子市)に、和洋折衷のロックバンド「和楽器バンド」が支援を名乗り出た。同じ「和楽器」を掲げる老舗の危機に人気バンドのメンバーが熱い心を寄せたプロジェクトは「たる募金」。かつてプロ野球の広島カープを市民が応援した事例から発想を得た草の根支援だ。 (山岸利行)
 支援は、和楽器バンド、所属事務所イグナイトマネージメント、ユニバーサルミュージックの三者によるプロジェクト。「伝統文化を支えるため、危機的状況の打破に少しでも貢献していく」とし、十五、十六日の横浜アリーナ(横浜市港北区)でのライブ収益の一部を寄付したり、ライブ会場に「たる」を設置して募金を呼び掛けたりする。
 プロジェクトの本格的始動を前に、津軽三味線を担当する蜷川べにが七月、東京和楽器を訪ね、同社の大瀧(おおたき)勝弘代表(80)の案内で三味線の製作現場を見学した。蜷川は、胴のパーツを手に取って「重みがありますね」、棹(さお)をサンドペーパーで滑らかにする工程では「いろいろなサイズ(のペーパー)があるんですね」などと興味深げ。小学生の頃から三味線を弾いていて、指のあて方で音が微妙に変わる繊細さや、撥(ばち)で叩(たた)く力強さが三味線の魅力だという。
 見学を終え、「工程を初めて拝見しましたが、一丁の三味線ができるまでには分業体制で手間暇かけられていることが分かった。三味線への思いが深まりました」と感じ入った様子。そして、「私たち和楽器バンドは、伝統音楽を引き継ぎつつ新しい世代に興味を持ってもらえる何かしらのきっかけになればとの思いで活動しています。楽器を作ってくださる職人の方に頑張っていただかないと、次の世代に伝えられなくなってしまう」と話した。

大瀧勝弘代表(左)から工程について説明を受ける和楽器バンドの蜷川べに=東京都八王子市で

 東京和楽器の廃業は、歌舞伎俳優がツイッターに上げたり、テレビやラジオなどでも報じられたりしているほか、和楽器バンドの支援についてもSNS上で大きな反響を呼んでいる。大瀧代表は「これまで一般的に社名を知られることはなかったが、これほど話題になるとは思わなかった」と驚き、「支援はありがたいことです。注文がある限り応えていきたい」と話す。
 文化庁の担当者は東京和楽器廃業の報道は承知しているとした上で、「三味線は歌舞伎や文楽などに欠かせない邦楽器。伝統芸能の実演を支える技術を保護することは大切であり、何ができるか検討中」と語った。加えて「長期的需要を喚起していくことも重要」と、需要の低迷が続いている現状を変えていく必要性にも言及した。
 同社は業績悪化から、大瀧代表が八月十五日での廃業を決めていたが、本紙報道後、追加注文が相次いで入ったことから、今秋まで稼働することになった。
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 「たる募金」はライブ会場のほか、オンラインや銀行振り込みでも受け付けている。詳細は「和楽器バンド」の公式サイトから。
<和楽器バンド> 詩吟、和楽器、ロックを融合させたバンド。尺八、箏、津軽三味線、和太鼓、ギター、ベース、ドラム、ボーカルの8人編成。2014年、アルバム「ボカロ三昧(ざんまい)」でデビュー。16年、東京・日本武道館公演を成功させたほか、北米単独ツアーなど海外でのライブ公演も行っている。 

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