<備える 台風19号の教訓>(5)自助共助 防災意識、着実に向上

2020年8月14日 07時47分

水戸市の洪水ハザードマップ。ピンクが浸水想定区域、緑の線が台風19号の浸水地域を示す=水戸市の万代橋で

 水戸市の那珂川流域で水害と言えば、県内で約一万五千戸が浸水した「昭和六十一年洪水」(一九八六年)のことだった。その記憶を上書きしたのが、市内で七百戸以上の住宅が全半壊や一部損壊した昨年十月の台風19号である。
 市の「洪水ハザードマップ」に記される浸水地域も、これまでの昭和六十一年洪水から台風19号に更新され、浸水想定区域の約一万一千九百世帯に順次配布されている。新たなマップは市役所などでも取得できる。
 避難や河川氾濫の情報を伝える防災ラジオへの関心も高まった。市は、浸水想定区域や土砂災害警戒区域などにある世帯に二年前から無償貸与しているが、台風19号後は普及率が約五割にアップした。
 防災の基本は、自分で身を守る「自助」であり、自助を補うのが「共助」であり、それでもやれないところを「公助」でカバーする。住民たちの自助共助を促す立場の市防災・危機管理課の小林良導課長は「繰り返し丁寧に説明することが、防災意識の普及につながる」と説明する。
 台風19号で多数の住宅が浸水した水戸市飯富地区のコミュニティー団体「飯富自治実践会」の加倉井喜正会長(69)も「地区内は高齢者が多い。同じことを続けることが定着につながる」と地道な努力の大切さを説く。
 鬼怒川氾濫(二〇一五年)に見舞われた常総市では台風19号の際、事前の準備が功を奏した。
 鬼怒川の水位は市内で氾濫危険水位を超えた。「鬼怒川の水位ですが今日は大丈夫です」「ただ今、避難勧告が発令されました」。根新田(ねしんでん)地区では、町内会から住民の携帯電話などにショートメールが次々と一斉送信された。
 根新田地区は鬼怒川氾濫時、約百世帯の九割ほどが浸水した。一斉メールは行事などの連絡用だったが、町内会は当時も、堤防決壊前から水位の上昇などを送信した。他の地区よりも逃げ遅れが少なかったとされ、その後も避難の呼びかけなどに使うことを決めていたのだ。
 根新田地区は鬼怒川氾濫をきっかけに、国土交通省下館河川事務所や市と共同で、住民一人一人が避難の手順を決めておく「マイタイムライン」の普及活動を始めた。マイタイムラインは、自治体などが策定する事前防災行動計画(タイムライン)の個人版。台風上陸などから時系列で「いつ」「何をする」と文書や表にして備える。
 台風19号では、住民の約六割が事前に避難した。自助のマイタイムラインと、共助の一斉メールが連動した結果だ。根新田町内会の自主防災組織の須賀英雄事務局長(69)は「マイタイムラインなどで手順や避難先を決めてあるからスムーズに避難できた。水害は事前に準備ができる。マイタイムラインの確実な実行で犠牲者をゼロにできる」と言い切る。
 市によると、これまで市内でマイタイムラインを作ったのは、人口の約15%に当たる九千人ほど。市防災危機管理課の岡野富士男課長は「情報伝達に最大限の力を入れているが、情報を受ける住民の意識も変えてもらう必要がある。そのためにも、マイタイムラインをもっと市内で広めていきたい」と強調する。
 もっとも、ここに来て新型コロナウイルスが共助のあり方に影を落とす。
 「災害時は隣近所で声をかけ合うことが大事」と加倉井会長。ところが、コロナの影響で地区のイベントの中止が続き、地域の絆が希薄になることが懸念される。他の地域でも事情は同じだ。
 加倉井会長は「時代とともにつながりが薄れつつある中で、さらに地域力が弱まるのではないか」と心配する。
 台風19号の教訓は、コロナ時代にどこまで生きるのか。 =おわり

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