<法律お助け隊 今野久子弁護士>「借金すべて兄が負う」、遺言有効?

2020年8月15日 07時04分
<お悩み> 6月に父が亡くなりました。相続人は兄と私の2人。公正証書遺言には、家業を継ぐ兄に自宅兼店舗を、私に約100万円を相続させるほか、すべての借金を兄が継ぐとあります。父は銀行融資を受けていました。兄は「心配するな」と言いますが、遺言どおり私は借金を負わずに済みますか。 (東京・女性32歳)

◆債権者の同意が必要

<お答え> 相続人は亡くなった人(被相続人)の財産だけでなく、債務も引き継ぎます。ただし相続人が複数いる場合(「共同相続人」といいます)、「債務は特定の相続人が引き継ぐ」と公正証書遺言に指定があり、相続人の間では遺言にある債務の負担に合意しても、債権者に強いることはできません。なぜなら債務者は債権者の同意なく債務を自由に処分できないからです。
 改正された民法九〇二条の二(二〇一九年七月一日施行)では、遺言で相続分の指定がされても、相続人は債権者に主張できず、債権者は共同相続人の各人に、法定相続分の割合(あなたの場合は各人二分の一)で債権を行使できると定めています。ただし債権者が承認すれば、一人の相続人に債務を引き継がせることも可能です(同条ただし書き)。お父様に融資した銀行が承認すれば、お兄様が全債務を受け継ぎ、あなたは債務を免れることができます。
 こうした考えは遺産分割協議にも当てはまります。
 債務を一切負わない別の方法に相続放棄があります。あなたは財産を相続するか放棄するか判断するには、債務の残額、担保の有無、金融機関との協議の現状など詳しい事情をお兄様に聞いたり、銀行に確認したりする必要があります。
 相続放棄は、相続開始の日または相続開始を知った日から三カ月以内に家庭裁判所に申し立てないといけません。期限が迫っています。債務の存否・内容などが不明で、調査に時間を要していると実情を書き、家裁に熟慮期間の延長を求める「相続承認・放棄の期間伸長の申立」という方法もあります。必要書類はネットで調べたり、家裁に問い合わせたりしてください。

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