<夏の口福便 地元の味届けます>冷やしうす塩大福(東京) 一つでぜいたく気分

2020年8月15日 07時04分

冷やしうす塩大福を手にする栗原さん=いずれも東京都板橋区で

 「大福、一つください」。店先で注文する地元客でにぎわう和菓子店「辰屋(たつや)かぎや」(東京都板橋区)。直径六センチ、重さ百グラム近くの「冷やしうす塩大福」にかぶりつくと、上品な甘さのあんが舌の上でほぐれた後、餅の優しい塩気が口の中に広がった。ひんやりとした食感と味が絶妙なバランスで、あっという間に食べきってしまう。
 約三百年前の江戸時代半ば、京都で修業した和菓子職人が、街道沿いの宿場町「上板橋宿」で菓子問屋を開業、通行人にまんじゅうや大福を提供したのが始まりとされる。明治時代の火事で一度廃業したが、他店で腕を磨いた辰年生まれの現在の店主、栗原登喜雄さん(67)が一九九八年に復興した。
 一番人気の冷やしうす塩大福が誕生したのは二〇〇〇年。消費スタイルの変化に伴い、帰宅途中に買った生菓子を翌日食べる客が増えていた。ただ、生菓子は日持ちがせず、硬くなりやすい。「次の日もおいしく食べてほしい」。餅に塩を加えることで軟らかさを保ち、冷蔵庫で翌々日まで保存できる大福を三カ月かけて開発。店の看板商品となった。

「冷やしうす塩大福」を作る栗原登喜雄さん。あんこと皮の量は五分五分だという

 昨年、従来の粒あんに加え、こしあんを発売。客層が広がり、順調に売り上げを伸ばしていたところ、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、一年で最も売れるお彼岸や花見の時期に、駅からの往来が途絶えた。
 今年三月の売り上げは前年同期比二〜三割減。それが四月七日の緊急事態宣言発令を境に、徐々に回復し始めた。「おいしいけど、値段が少し高いね」と言われる一個二百三十円の大福を、自宅用に一つ、二つと買う客が増えたのだ。
 「ステイホーム中に、せめて少しのぜいたくを、と思ったのでしょうね」と栗原さん。五月の売り上げは一転、同九割増と過去最高を記録。「苦境があっても、地元の人に支えられていると実感した」とほほ笑んだ。  (東京新聞・今川綾音)
  =おわり

「冷やしうす塩大福」(手前)と「冷やしわらび大福」

<冷やしうす塩大福> 東京都板橋区のハッピーロード大山商店街にある「辰屋かぎや」の看板商品。つぶしあん(粒あん)、こしあんがあり、各1個230円。夏にぴったりの「冷やしわらび大福」(同230円)も人気。1個から冷凍で全国配送する(送料別)。届いた日に食べたい人向けに、クール便での配送にも対応。問い合わせは、同店=電03(3955)5588。

関連キーワード

PR情報

ライフの最新ニュース

記事一覧