<壁を破る ◎群馬発>桐生の重伝建をまちおこし 本屋店主の斎藤直己さん

2020年5月3日 02時00分

まちおこしに取り組む斎藤さん=いずれも桐生市で

 国の重要伝統的建造物群保存地区(重伝建)に指定される桐生市の本町一帯。かつて織物業が栄え、今も土蔵造りの店舗など幕末から昭和初期の歴史的建造物が並ぶ。新型コロナウイルス感染症の拡大前、関東各地などから観光客が足を運んでいた。
 町内の旧早政(はやまさ)織物工場内でデザイン事務所を営む斎藤直己さん(42)は、一角で書店「ふやふや堂」を週二回開く。三月には、地元有志と二〇一六年に全焼した木造平屋を活用した交流施設「カイバ(買場)テラス」を開業させ、町おこしに力を注ぐ。
 高校まで市内で本に囲まれて育ち、高校時代に村上春樹さんの小説に興味を持った。大学進学で上京し、フランス文学を専攻。神田神保町の喫茶店でアルバイトし、古書店に通った。
 雑誌や書籍のデザイン会社に就職し、二〇〇七年に京都府内で地図デザイン事務所を開いた。新しい場所に移りたいと考え始めた時、故郷の桐生市は店や若者が減少していた。
 新事務所は古い建物を活用しようと、一二年に旧早政織物工場へ移転。「人が来るにはどうしたら良いか。自分ができることがあればやろう」。町に人が集まる本屋が必要との信念から一四年、書店を開いた。
 「本は好きな人が読むものだと思われがちだが、店にはさまざまなジャンルがあり、誰が来ても興味が持てる。本は万人に向けて開かれている」と力説する。来客が増え、客同士の交流が生まれた。自身も地元商店主などとの交流が広がり、手応えを感じ始めた。
 一五年から桐生市本町の買場通りで毎月第一土曜日にある「買場紗綾(かいばさや)市」に参加。ところが、一六年六月、重伝建内にある市の交流施設で、一八八二(明治十五)年建設の木造平屋が全焼した。地元から紗綾市の存続を危ぶむ声が相次ぐ。ただ、市を支えていたのは七十~八十代で、若い人はいない。自身が再建に向けた活動の中心を担った。
 再建後、建物の半分を利用する案も出たが「全てを借りて若い人を巻き込める、レンタルコミュニティースペースにしよう」と提案。補助金の申請に時間がかかったが、今年三月に交流施設の開業にこぎ着けた。
 だが、再び困難が立ちはだかる。新型コロナウイルス感染症だ。現在、満足のいく活動はできないが、施設には飲食店が出店し、持ち帰り用の弁当を売る。
 「困っているお店の人がいるので、身を寄せ合い助け合って乗り越えられたら」と願う。「ウイルスが終息したら、人が行き交う重伝建の観光拠点にし、かつての買場のにぎわいを現代によみがえらせたい」と前を見据えている。 (市川勘太郎)
     ◇
 新型コロナウイルスによる不安が広がり、活動自粛などで閉塞(へいそく)感も漂う。そんな中、新しいことに挑戦したり、困難を打ち破る活動をしている人たちの思いや姿を紹介する。
<カイバテラス> 桐生市本町1の5の26。営業時間は緊急事態宣言中は午前11時~午後4時で短縮営業する。火曜日定休。ふやふや堂は同町1の4の13。営業日は月曜日午後4時~同7時、金曜日正午~午後7時。

3月に開業した「カイバテラス」

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