ネットや動画活用し戦争体験を語り継ぐ コロナ禍も乗り越えて

2020年8月16日 06時00分
「戦場体験放映保存の会」のウェブ茶話会で証言をする、沖縄戦で学徒動員され看護に当たった上原米子さん=東京都文京区で

「戦場体験放映保存の会」のウェブ茶話会で証言をする、沖縄戦で学徒動員され看護に当たった上原米子さん=東京都文京区で

  • 「戦場体験放映保存の会」のウェブ茶話会で証言をする、沖縄戦で学徒動員され看護に当たった上原米子さん=東京都文京区で
 終戦から75年を迎えた15日、平和への祈りが各地で広がる中、歴史資料に残らない戦争体験者の経験や記憶を語り継ぐ努力が続いている。今年は新型コロナウイルスの感染抑止のため、証言活動を中止する影響で、動画配信に活路を見いだす団体も。体験者の減少が加速する中、戦後世代がインターネットを利用して国内外に惨禍の実相を伝える試みも生まれている。 (梅野光春、鈴木凜平)

◆戦争体験者の証言、より貴重に

 「終戦時に生まれても75歳。戦場に赴いた体験などを語る方は、ご存命でも体力的に厳しい方が少なくない」。旧日本兵らの体験を映像で記録する「戦場体験放映保存の会」(東京都北区)の田所智子さとこ事務局次長(54)は話す。
 2004年の発足以降、元兵士の証言を中心に約1800人の映像を録画し、一部をネットで公開しているが年々、新たな証言集めは難しくなっている。総務省の推計では昨年10月現在、戦後生まれが国内人口の84.5%を占める。前年より0.9ポイント増えた。
 元特攻隊員の父の証言活動をサポートする東京都国分寺市の岩井直子さん(61)が20年ほど前に、特攻隊員の遺書を読んだ時のこと。父に「戦前の教育を受ければ『潔く死のう』と考えるのか」と尋ねると「検閲や、遺書を読む家族の気持ちに配慮すると、そういう内容になる。本心は違う兵士もいたはず」と諭された。「戦争体験者に聞き、初めて伝わることもある」。その父は今年、100歳を迎えた。

◆YouTube配信に反響

 戦争体験者の高齢化に、今年は新型コロナの影響も加わった。広島平和記念資料館(広島市中区)は2月末から3カ月間、臨時休館。最大で1日20回あった被爆者の講話を休止した。加藤秀一副館長は「被爆75年という節目。多くの人に平和を訴える機会だったが…」と残念がる。
 そこで同館は4月、被爆者が過去に語った映像を、動画投稿サイト「ユーチューブ」での公開を始めた。今月11日現在で6800回以上再生された。全国の学校から「授業で使いたい」などと問い合わせが相次いでいるという。
 「戦場体験放映保存の会」も今年6月、沖縄戦で学徒動員された女性が自宅で語る姿をネット中継。「高齢者や遠隔地の人にも見てもらえた」と田所さんは手応えを感じている。

◆感染乗り越えてネットで海外へ

 海外への発信も進んでいる。2014年から大学教員や翻訳家ら約40人がボランティアで活動する「NETネットGTASジータス」(京都市右京区)は国立広島原爆死没者追悼平和祈念館(広島市中区)と提携。同館が収録した被爆者の証言映像に英語やロシア語、ヒンディー語など計15カ国語の字幕を付けている。
 既に178本の翻訳版をアップロードした。会員制交流サイト(SNS)で拡散しやすいよう、昨年末には新しいウェブサイトも開設した。事務局の阿比留あびる高広さん(25)は「被爆者の声を聞いたことのある外国人は少ないだろう。感染症の影響がないネットの強みを生かし、広島と長崎で起きた事実を海外にも伝えたい」と話す。

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