<ひと物語>自然生かした憩いの場に 稲荷山緑地地区手入れを続ける・福田朝男 代表ら

2020年8月16日 07時03分

大輪を咲かせたヤマユリと、左から福田さん、横山さん、吉川さん、尾高さん=7月22日、狭山市で

 「近づいて大輪を仰ぎたい」「特有の芳香も嗅いでみたい」−。
 七月の狭山・稲荷山緑地保全地区では、コロナ禍にもかかわらず、自生ヤマユリの観賞に訪れる人たちが後を絶たなかった。
 「藪(やぶ)を刈り、クズのつるを引き抜いて整備してきたかいがあった」。二〇一六年から現地での手入れを続けている市民ボランティア「稲荷山・山ゆりの会」代表の福田朝男さん(72)は感無量の表情を浮かべた。
 保全地区にはヤマユリのほか、カタクリ、ヤマツツジ、サクラなど四季折々の花が自生するが、急勾配で手入れがしづらく、荒れ果てていた。地元で「ほったらかし公園」とやゆされるほどだった。
 地元に住む福田さんが立ち上がった。きっかけは一四年、半世紀ぶりに現地で復活した「つつじ祭り」にあった。「祭りに合わせ保全地区を整備してくれると期待した。担当者に尋ねると、頂上の平面部分の草刈りをするだけだと。ならば自分でやるほかない」
 四カ月間、自力で整備を試みたが難航。そこで近くに住む吉川(きっかわ)富士男さん(80)、横山由洋さん(70)、尾高敏夫さん(70)に声を掛け、平均年齢約七十歳のカルテットを組んだ。それでも巨大なクズの根やつるを二日がかりで抜くなど大変な作業で、けがも絶えなかった。
 「クズを横へ引っ張り左肩腱(けん)板を断裂」(吉川さん)、「急勾配の作業で痛めた両膝を手術」(福田さん)、「ブヨに刺された両目が腫れ上がった」(尾高さん)、「雨でぬれた階段で滑って腰を打撲」(横山さん)。けがが癒えると再び作業に復帰した。
 苦労は、一八年ごろから成果となって現れた。新聞などメディアに取り上げられ、観賞者が増えていく。新潟県や群馬県、静岡県など県外からやってくる人もいた。
 「当初目的にした、現地の豊かな自然環境と植生を生かした憩いの場になりつつある」と福田さん。現在もヤマユリ開花期の七月と夏季の八月を除く十カ月間、作業を続けている。「人生九十年の時代。引き続き、整備と再生に力を尽くしたい」と四人は声をそろえる。
 とはいえ後継者が二、三人は欲しい。福田さんは「ヤマユリ、ヤマツツジの植生保護に興味のある方にはぜひお越しいただきたい」と呼び掛ける。問い合わせは福田さんのメール=fuchan1subaru2@outlook.jp=へ。(加藤木信夫)
<ふくだ・あさお> 栃木県矢板市出身。2014年NTT東日本退職。16年4月に藪(やぶ)に埋もれていた自宅近くの稲荷山緑地保全地区の手入れに着手。併せてヤマユリ発芽状況の詳細調査を実施した。19年に近隣住民有志とともに市民ボランティア「稲荷山・山ゆりの会」を結成。当地の保全とヤマユリ開花期のガイドなどを続けている。

稲荷山緑地保全地区の手入れを続ける「稲荷山・山ゆりの会」のメンバー=狭山市で(同会提供)


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