<ひと物語 コロナ編>定年 地元のホープに 結城麦酒醸造代表・塚越敏典(つかこし・としのり)さん(62)

2020年8月16日 07時04分
 結城市産の大麦「ミカモゴールデン」を主原料に取り入れたクラフトビールを開発、今月から県内をはじめとする居酒屋やビアパブに卸し始めた。「新型コロナウイルスの影響で疲弊する地元経済を盛り上げたい」と意気込む。
 市内生まれ。公立小中学校の教員を三十七年務め、二〇一八年三月に故郷の市立結城中校長で定年退職した。定年が近づくにつれ「こうやって人間は枯れていくのか」と感じていたが、「まだまだ社会の役に立ちたい」との思いが募り、目を付けたのがビールだった。
 とはいえ、決して「ビール党」だったわけではない。たまたま誘われてビール造りを体験する機会があり、それほど難しい工程がなく「これなら自分にもできるのでは」と手応えを得たのがきっかけだ。
 教員を退職後、宇都宮市のビール工房「栃木マイクロブルワリー」での三カ月の修業を経て、昨年七月に自分の工場を構えた。場所は、息子が経営するエスニック料理店「LOTUS(ロータス)」(結城市中央町一)の一部を改装して間借り。もともとは大手居酒屋チェーンの店舗だった物件という。
 開業資金は千二百万円。退職金を充てることもできたが、事業に対する甘えを許さないため、あえて銀行から借り入れた。クラウドファンディングを試みたところ、かつての教え子たちの協力も得られ、百七十万円が集まった。
 酒税法上、麦芽(大麦の種子を発芽させたもの)やホップなど以外に、フルーツやスパイスを原料に含むビールは「発泡酒」扱いになる。発泡酒の免許取得には年間六千リットル以上の製造が必要だが、創業七カ月でクリア。これまでに結城市産のトウモロコシやユズ、筑西市産のイチゴ、桜川市産のミカン、大子町産のリンゴなどを香り付けの副原料に用いた十種類以上のビールを発売した。
 「次は主原料の大麦も地元産で」と考えたが、日本の大麦はアルコールの生成に必要な「糖化」の効率が悪く、価格も高いため、ビール製造には不向き。
 試行錯誤の末、カナダ産の大麦に一割弱、ミカモゴールデンを混ぜることで商品化に成功した。教え子が結城市内で生産しているものだ。風味を決定づけるホップには栃木県茂木町産を採用した。
 新製品「ゆうきスタイルIPA」はインディア・ペールエール(IPA)と呼ばれる種類のビール。明るい琥珀(こはく)色にホップの利いた苦味が特色で、アルコール度数はやや高めだ。
 結城市は今年、結城紬(つむぎ)の国連教育科学文化機関(ユネスコ)無形文化遺産登録十周年でも盛り上がっている。「ゆくゆくは『結城といえば結城紬と結城ビール』と言われるようになりたい」と前を見据える。(宮尾幹成)
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 結城麦酒醸造のクラフトビールは、県内では自社工場のほか、池田酒店、結城つむぎセンター、結城ショッピングセンター(結城市)、グランテラス筑西(筑西市)、スドウ酒店(つくば市)などで販売している。「ゆうきスタイルIPA」は330ミリリットル入りで税込み605円。問い合わせは結城麦酒醸造=電090(1812)4510=へ。

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