中道派は細り…分断社会の対立に悩む<米大統領選 バイデンの戦い 中>

2020年8月20日 06時00分
 「心が乱されている」。米中西部ミズーリ州の下院選・民主党予備選で今月、古参の現職を破り党候補者となった黒人女性運動家コリ・ブッシュ(44)は、バイデンが検事出身の上院議員カマラ・ハリスを副大統領候補に選んだことに「失望」の思いを語った。

2019年12月、民主党の候補者争いの討論会で、左派上院議員サンダースの発言に天を仰ぐバイデン=ゲッティ・共同


 ブッシュは「プログレッシブ(進歩派)」と呼ばれる左派。「黒人女性初の副大統領候補」を党内の多くは歓迎するが、左派の一部からは不満の声が挙がる。ハリスがバイデンと同じ中道派でカリフォルニア司法長官当時、刑事司法改革に取り組まなかったとされることなどが理由だ。
 バイデンが勝利するには、幅広い層から支持を得る必要がある。自らには近年民主党で大統領になったカーター、クリントン、オバマのような新鮮さもカリスマもなく、予備選序盤で3連敗し窮地に追い込まれた「弱い候補」だからだ。
 4年前は候補になったヒラリー・クリントンが左派を軽視したとみられ、支持を得られず敗北した。
 バイデンは今回、国内政策を大きく左派に寄せた。慎重だった環境政策で「クリーンエネルギーに4年で2兆ドル(約212兆円)を投じ雇用を創出する」と発表。育児と介護には10年で80兆円以上費やすとし、医療保険拡充や学生ローンの一部免除、企業や富裕層の課税強化も唱えた。

今年2月、集会でバイデンを支持する看板を掲げる労働組合員=ゲッティ・共同

 背景には、米社会の分極化がある。
 米議会民主党では、バイデンと党候補指名を争った左派上院議員サンダースが1991年に6人で発足させた「進歩派議連」が、2018年にはオカシオコルテスら若手の当選で95人にまで増え、今や同党下院の4割を占める。
 その分、バイデンのような中道派は細る。仮に大統領選で勝利すれば、オバマ政権以上に左派色が強くなると指摘されている。
 一方、白人労働者層や郊外の保守層は4年前、「米国第一」を唱え国境の壁建設などを主張した共和党のトランプを支持した。バイデンはこうした層の支持を取り戻すことも課題だ。
 「バイデンは極左に乗っ取られた操り人形だ!」。トランプは保守層の不安をあおるように繰り返す。
 「バイデンが左派の政治家になれば、国民全体の過半数をまとめることができるはずの自身の能力を損なうだろう」。共和党の戦略アドバイザー、ホイット・エアーズはそう分析する。
 労働組合と関係が強く、労働者層の支持が期待できるバイデンだが、左に行き過ぎれば警戒され拒否感を強められる恐れもあり、慎重にならざるを得ない。左派からは、国民皆保険の導入を打ち出さないことなどへの反発、不信は根強い。
 社会の分断が強まる中、より右寄りの層からの強い支持を狙うトランプとは対照的に、バイデンは左派と保守層の「二兎」を追わなければならない。
 ニューヨーク州立大のジェイコブ・ナイハイゼル准教授は、トランプが新型コロナウイルス対応などで批判され、追い風はあるものの「バイデンはオバマではなく、熱狂を生み出さない。針に糸を通すように両側に訴える必要がある」と指摘する。(敬称略、ワシントン・金杉貴雄)

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