<群馬大学×宇都宮大学 共同教育学部> (上)新時代の教育に挑む

2020年4月1日 02時00分

群馬大の平塚学長(中央左)と宇都宮大の石田学長(同右)。左は渡辺・前橋支局長、右は蒲・宇都宮支局長=東京都千代田区の東京新聞(中日新聞東京本社)で

 新時代の人材育成を目指し、群馬大学と宇都宮大学の共同教育学部が一日、スタートする。群馬、栃木両県の教育現場を支えてきた両大学だが、少子化などを背景に協力して幅広い専門分野の教員養成に臨むことになった。教育の質はどう確保されるか、情報通信技術(ICT)教育など新時代の教育にどう対応するか。群大の平塚浩士学長と宇大の石田朋靖学長に全国初となる共同教育学部の展望と意気込みを聞いた。 (小川直人、市川勘太郎)
 -共同教育学部を創設することになった経緯は。
 石田さん 五年前の同じ時期に互いに学長になり、その頃から初等中等教育の重要性について話はしていた。国立大学の法人化以降、教員数を減らさなければならなくなり、教員養成の質をいかに担保するか、飲みながら話したことがきっかけ。
 平塚さん 教育は国の将来の根幹だ。このまま教育学部が縮小されたら、やっていけないのではないかという危機感を互いに持っていた。話し合いが積み重なって実現した。
 石田さん さまざまな可能性を模索した。県の教育委員会は、これまで通り幅広い教員免許を出せる体制を維持してほしいという意向が強かった。質を維持、向上させるには、教育学部では全国初となる共同教育学部しかないだろうと。山口大と鹿児島大の共同獣医学部の前例も参考にした。
 -偶然にも石田さんは群馬県出身で、平塚さんは栃木県の足利高校出身。交流に何か影響はあったか。
 石田さん 出身に親近感はあった。それがきっかけで親しくなった。
 平塚さん それもあり、互いの信頼関係を築けた。
 -それぞれの教育学部の特色は。それを共同学部でどう反映させるか。
 石田さん 宇大の特色の一つは、小学校教員の養成に力を入れている点だ。教員になる直前に不得意部分を振り返る「アドバンスト科目」も設けている。
 平塚さん 県教委の採用状況から、群大では逆に中学校教員の養成に力を入れてきたから、双方の強みをうまく生かせるだろう。
 一年生の夏ごろに教育の現場を見学するのも特色の一つ。ICT教育の教材開発にも力を入れていく予定で、今後は宇大とも一緒にやっていこうと思っている。交流する中で互いに良い点は取り入れるつもりだ。
 石田さん 宇大には国際学部と農学部があり、教育学部を支援してくれる。群大は医学部がある。補い合える部分だ。
 平塚さん 群大では特別支援教育、特に聴覚障害教育に熱心に取り組んできた。
 石田さん 宇大は特別支援では知的、肢体不自由、病弱の三領域しかサポートしていなかったが、視覚障害の教員も新たに採用して、共同学部では全五領域を網羅できることになる。これは大きいことだ。
 -多くの科目で「双方向遠隔メディアシステム」によるモニター越しの授業が展開されることになるが、デメリットはないか。人間教育の側面にどう対応していくのか。
 平塚さん 学生の移動を少なくするため、遠隔授業を取り入れることにした。新しい第五世代(5G)移動通信システムに移行すれば将来的にさらに良くなるだろう。かつてのようにモニターに教室全体を映すだけではなく、議論もできる。教員と学生の親しい関係は維持できるはずだ。
 石田さん 遠隔授業で受けてもらう科目でも、両大学にその科目を担当できる教員はいるため、きめ細かい指導は可能だ。ただ、人が人を教えるのだから雰囲気や現場感は欠かせない。そこは大事にしたい。キャンパスがあるという意味をもう一度問い直したい。
 -両県とも外国人住民が増えている。国際化への対応はどうなるか。
 石田さん 宇大には国際学部があり、多文化共生社会は意識してきた。外国人の子どもは義務教育も大変だが、高校に入るのが難しい。初等中等教育の中で支援するプロジェクトをやってきている。
 平塚さん 群大の医学部でも外国人の子どもの健康をどうサポートするかを考えてきた。ここでも、互いの持ち味を組み合わせて充実させたい。 (後半に続く)
<平塚浩士(ひらつか・ひろし)> 1945年生まれ。群馬県館林市出身。群馬大工学部卒。東京工業大院博士課程を修了。群大教授、副学長などを経て、2015年から学長。
<石田朋靖(いしだ・ともやす)> 1955年生まれ。群馬県藤岡市出身。東大農学部卒。東大院農学系研究科博士課程を修了。宇大教授、農学部長、副学長などを経て、2015年から学長。

◆カメラ映像使って遠隔授業

 共同学部は文部科学省の設置基準により、双方の大学で三十一単位以上を提供し合い、計六十二単位以上を共同で授業展開することになっている。
 群馬大と宇都宮大の共同教育学部では、群大側が「教職論」「小学校社会」などを、宇大側が「教育原論」「小学校国語」などを担当する。
 これらの授業はカメラ映像を使ったリアルタイムの遠隔授業で行われる。例えば群大側の「教職論」では、宇大の学生は教室のモニターを見ながら学ぶことになる。教員のいない宇大側の教室には、大学院生らアシスタントを配置するという。
 共同の科目には「ICT教育の授業設計」や「プログラミング教育法」などが新設され、教職特別演習として合同の宿泊研修も実施される。その他の科目は従来通りの教員との対面授業になる。
 共同のカリキュラムで学ぶのは、本年度入学の一年生から。二年生以上は従来通りのカリキュラムで学ぶ。

関連キーワード

PR情報

群馬の新着

記事一覧