ダイアログ・ミュージアム「対話の森」、23日オープン 苦難乗り越えたネパール出身の視覚障害者、案内役に

2020年8月20日 13時50分

新たに始まる「ダイアログ・イン・ザ・ライト」で案内役デビューするニノさん=いずれも東京都港区のダイアログ・ミュージアム「対話の森」で

 暗闇の中で視覚障害者に導かれながらさまざまな体験をするイベント「ダイアログ・イン・ザ・ダーク(暗闇の中での対話)」の常設ミュージアムが23日、東京都内にオープンする。新型コロナウイルスの影響で当面、光の下で対話をより重視するイベントに変更して実施。案内役としてデビューするネパール出身のニノさん(30)は、母国でも日本でも障害ゆえに多くの苦難と嫌な思いを経験してきた。「お互いの話を聞く場をつくり、社会の考え方を変えたい」と意欲を見せる。 (神谷円香)
 ニノさんは先天性の病気のため、まぶしい光が目の痛みで分かる程度。ネパールは日本のような特別支援学校はほぼなく、健常者と同じ学校で点字を教わりながら、友達に本の内容を録音してもらうなどしながら勉強した。英語教育を専攻して大学院まで進み「ネパールの視覚障害者は英語をどう学ぶか」を自身の経験を踏まえ論文にまとめた努力家だ。
 外国で異文化に触れたい気持ちは子どもの頃からあった。米国留学を志すも「障害者は難しい」とビザが出ず断念。英語教師などで働きながら、独学で学んだ日本史が好きになり、日本留学を目指した。約50の日本語学校にメールするもほとんどで断られたが、新宿の学校が受け入れてくれ、2016年4月に来日した。
 日本語学校を出て、視覚・聴覚障害者のための筑波技術大で昨年3月、大学院修士課程を終えた。博士課程進学も考えつつ就職先を探すが、立ちはだかったのは家探し。「学校の寮では問題なく1人暮らしをした。ガスは使わないし階段も上れる」。そう言っても万一の事故を恐れ、多くの不動産業者に断られた。視覚障害者が家を借りる難しさを知った。
 障害者への理解でいえば、ネパールは「教育が足りていないから差別がある」とニノさん。でも、点字ブロックが一般的で、知識はあるはずの日本で知った無理解と無関心。「ショックで胸に刺さった。何で信じてくれないの、と」
 昨秋、ダイアログの案内役に誘われた。「社会を変えるのに貢献したい」と応募、研修を経て運営団体の職員になった。
 暗闇での対話では、参加者が視覚以外の感覚を研ぎ澄ませ、案内役とのやりとりを通じて自身の日常と違う世界や価値観を知る。しかし、感染予防策として参加者同士の距離を取りにくいため、しばらくは部屋を間接照明で薄明かりにし、間隔を取って輪になり、テーマに沿った対話が中心になる。対話の内容はその場の流れで変わり、案内役の腕の見せどころだ。ニノさんは「断った不動産屋さんにも参加してほしい」と、堪能な日本語で笑顔を見せた。

◆対話を重視、価値観の違い知る機会

 「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」で、参加者はいろいろなものに触れたり、飲食したり、音楽の演奏を聴いたりする。案内役を務める視覚障害者は、暗闇の中での移動を助けるだけでなく、参加者が日常では気付けないことを見つけられるよう促す役割も果たす。
 「ダーク」で使う真っ暗な会場を明るくして実施する「ダイアログ・イン・ザ・ライト」では、「ノイズの森」「公園」「夜の高原」の部屋を回りながら、より対話を重視する。
 記者が事前体験会に参加した際は「ノイズの森」で案内役の視覚障害者が「ノイズって何でしょう」と問い掛けた。ある参加者が「うるさい音」と答えると、案内役が「車の音はうるさいかもしれないが、車の音が途切れると、信号が青になったと分かる」と説明。価値観の違いを知ることができた。

 ダイアログ・ミュージアム「対話の森」 東京都港区海岸のアトレ竹芝シアター棟1階に常設オープン。体験時間は2時間、料金は大人3500円。小学生から体験可能。1日3回開催でウェブサイトからの事前予約制。音のない世界で対話する「ダイアログ・イン・サイレンス」もある。問い合わせは=電03(6231)1634=へ。

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