外交経験自負も「誤った開戦」<米大統領選 バイデンの戦い 下>

2020年8月21日 06時00分
 今年1月、大統領選の民主党候補者討論会。「大きな間違いだった」。バイデンはイラク戦争直前の2002年、上院議員として開戦に賛成したのは誤りだったと認め、悔やんだ。

2001年7月、共和党大統領ブッシュ(子)(中)とホワイトハウスで会合する上院外交委員長当時のバイデン(右)=ゲッティ・共同

 それは単なる1票の賛成票ではなかった。当時上院外交委員長として、委員会での承認を主導。共和党の「ブッシュの大義なき戦争」に積極的に協力した。

◆血塗られた手

 「何千人ものわれわれの兄弟や無数のイラクの民間人を殺した戦争を可能にした人に、なぜ投票する必要があるのか」。討論会から2カ月後。バイデンは西部カリフォルニア州の集会で、退役軍人の男性に激しく詰め寄られた。
 立ち去るバイデンの背中に男性は「あなたの手は血塗られている」と言葉を投げ付け「トランプの方が反戦だ」と語った。イラク戦争では、米兵4500人、イラク市民約12万人が犠牲になった。
 08年大統領選でオバマはイラク戦争を「誤った戦争」と批判し勝利。皮肉にも、バイデンはそのオバマの副大統領となった。

◆欠ける一貫性

 オバマは外交経験に乏しく、外交の中心はバイデンが担った。バイデンは今、長年の経験と知識を自負し、トランプに傷つけられた米国の外交を立て直すと主張する。だが、オバマ政権で国防長官だったロバート・ゲイツはバイデンについて「過去40年、ほぼ全ての主要な外交、国家安全保障問題で間違っていた」と回顧録で切り捨てている。
 「誤り」として挙げられるのはイラク戦争への対応のほか、国連決議に基づいていた1991年の湾岸戦争への反対、2011年のイラク撤退でテロ組織の台頭を許したと批判されていること、アフガニスタンへの増派反対などがある。
 米企業公共政策研究所の外交政策専門家コリ・シェイクも、バイデン外交について「軍事力をいつどのように使うかという一貫した哲学に欠けている」と米誌アトランティックへの寄稿で批判している。
 シェイクは、トランプの外交よりは良いとしながらも「バイデンが混乱し、誤った外交政策を唱え続けていることは見落とされるべきではない」と警告する。

◆党内でもリベラル寄り

 擁護の声もある。プリンストン大教授アーロン・フリードバーグは「湾岸戦争への反対もイラク戦争への賛成も、同じ投票をした民主党議員はほかにもいた。バイデンは基本的には海外での軍事介入に熱心でなく、党内でもリベラル寄りだ」と語る。
 バイデンはトランプが「同盟国との関係を損ない、北朝鮮など独裁国家の首脳との関係を重視してきた」と非難。民主主義国との同盟を再構築すると訴える。

2013年12月、中国の習近平国家主席と握手するオバマ政権の副大統領当時のバイデン=ゲッティ・共同

 逆にトランプはバイデンに対しイラク戦争への賛成のほかオバマ政権当時、中国に融和的だったこと、環太平洋連携協定(TPP)を推進したことなどを攻撃するとみられ、外交を巡る応酬は激しくなりそうだ。
 フリードバーグは、バイデン外交について「対中国を含め自身は強い信念を持っていない。そのため、政策は周囲の助言に左右される」とその不確実性を指摘している。

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