「藤井時代」の幕開け 「空前絶後」の羽生超えに期待
2020年8月21日 05時55分
藤井聡太新王位は、これまで数々の最年少記録を塗り替えてきた。14歳でプロ入り、15歳で初の棋戦優勝、17歳でタイトル挑戦と獲得―。どれも快挙だが、18歳1カ月での二冠達成は、その早熟さだけではない到達点の高さを示した。やがて来ると言われた「藤井時代」が、早くも幕を開けたと言っていい。
将棋界は1人の棋士がタイトルの過半数を独占し、一時代を築いてきた歴史がある。戦後から1960年代は故大山康晴15世名人、70~80年代は中原誠16世名人(72)、そして90~2010年代は羽生善治九段(49)の時代だった。
中でも羽生九段は25歳で史上初の全七冠(当時)を制覇、四半世紀にわたり頂点に君臨した。獲得してきたタイトルは99期に達する。その絶対王者でさえ、二冠到達は22歳になる直前だった。成長途上の藤井新王位なら「空前絶後」と言われたその偉業に並ぶ、あるいは超えられるという期待も膨らむ。
特筆すべきは中終盤での読みの速さと正確さ。詰め将棋というアナログな手法で基礎力を培い、人工知能(AI)を用いた研究で磨き上げた。時に、AIも瞬時には読み切れないような深遠な一手を放つ。「積んでいるエンジンが違う」という敗戦棋士の嘆息が、規格外ぶりを表している。
今後、棋界統一には渡辺明名人(36)、豊島将之竜王(30)ら、年長のトップ棋士が立ちはだかる。「次代の後継者」が、どのように歴史を切りひらいていくか、将棋界から目が離せない。(樋口薫)
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